インタビュー

YOLZ IN THE SKY

 表情を隠して加速するハンマー・ビートで不穏なグルーヴを巻き起こすYOLZ IN THE SKY。クラウト・ロックやポスト・パンクのムードを纏った暗黒ダンス空間を現出させる彼らが、ニュー・アルバム『IONIZATION』を完成させた。プロデューサーの吉田肇(PANICSMILE)と共にテクノへも接近してみせた本作について、ギターの柴田健太郎が語る。

使ったエフェクターは全部〈1軍〉

――前作『YOLZ IN THE SKY』から2年経ちましたが、あの当時からいままでの活動を、どのように振り返っていますか?

柴田「全然、何も変わってないですね(笑)。ひたすらにライヴやって、曲作って……それ以外は何もないです。別に他にやることもないですから。ものすごくシンプルな日々でしたよ」

――それだけ、バンドに集中した2年間だった?

柴田「そうですね。そういう意味では良かったのかも。誘われたイヴェントに出て、スタジオ入って。その繰り返しです。そんなこんなで2年が経っていたので、あっという間だったなぁという感想ですね」

――その2年間で、音楽性に変化を与えるような出来事などは、ありましたか?

柴田「特には……ないんですよね(苦笑)。でも『YOLZ IN THE SKY』を出してから、方向性に対する意識の変化みたいなものは芽生えましたね。簡単に言うと、前と同じようなもんを作っても、おもしろくないよなーっていう。いままではセッション中心の曲作りだったんですよ。一斉に音を出して、そこから生まれるもので曲を作っていたんですけど、いまはドラムの良いフレーズがあればそれを抽出して、そのフレーズを中心に音を乗せていったりとか……作り方はだいぶ変わりましたね」

――その変化は、アルバムを丁寧に作ろうと思ったから? それとも別の理由で?

柴田「うーん、なんやろう? その時好きでけっこう聴いていたのが、80年代のディスコ要素の強いポスト・パンクとかで。あとテクノとか。〈こういうのやりたいなー〉とメンバーと話していたら、〈できるんちゃう?〉って。それに取り組みはじめてから、作り方が変わったんですよ」

――ポスト・パンク的な要素って、結成当初からヨルズにはあったと思うんです。だけど最新アルバム『IONIZATION』は、抑制を効かせて狂気を音に内包させるというか、80年代当時のバンドが抱えていたダークさや、ペシミズムみたいなものがより顕著に出ているような気がしていて。

柴田「もともと、そういう要素は好きでした。今回は、特にそっちの方向に意識して持っていったというのはあったと思います。ただ、ダークなものが好きかというと、別にそういうわけでもないんですよ」

――ドラム、ベースなどいろいろと変わった部分はあるんですけど、今回特に、ギターの音色がおもしろいと思っていて。

柴田「意識して何に似せようとか、そういう思いでギターの音を作ったわけではないんです。ただ僕、アンディ・パートリッジが好きなんですよ。『Take Away』というアルバムが特に好きなんですけど、あの質感は意識したかもしれないですね。あと、『テクノデリック』『BGM』の時期のYMOとか。ああいうのはすごく好きですね」

――よく言われるかもしれませんが、まるでアナログ・シンセのような音をギターで出していますよね。かなり強いこだわりを感じました。デトロイト・テクノとか、そういう影響もあったりするのかな? なんて思ったのですが。

柴田「そうですね。そういうのも聴きます。ただ、音楽的にはもうちょっとチープな感じの音が好きなんですよね。前作を出した後とかによく聴いていたのは、リカルド・ヴィラロボスとか。そういう感触のほうが好きですね。シンセの音も、80年代のテクノ・ポップのようなアナログ・シンセが好きなんですよ。まあ、あの音を出すために特別な技術があるわけでもないんですけど」

――でも、エフェクターにはかなりのこだわりがあるんじゃないですか?

柴田「そうですね。一応、このアルバムで使っているエフェクターは僕のなかで〈1軍〉なんですよ(笑)。〈2軍〉はもう売り払いました。今回は、それくらい僕の好きな音を詰め込んで作っていますね」

▼YOLZ IN THE SKYの作品を紹介

▼文中に登場した作品の一部を紹介

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年11月04日 18:00

更新: 2009年11月04日 18:47

文/冨田 明宏