YOLZ IN THE SKY(3)
浮世離れしてるかもしれない
――次のことって、もう考えているんですか?
柴田「いまは、アルバムの収録が終わってから一度もスタジオに行ってなくて。頭のなかを白紙に戻しているところなんですよ。とりあえず、リセットやと。そのまま流れで何かをやるのは好きじゃないので、ここ2~3か月くらい、音楽もほとんど聴いてないんです。それで、12月からまたやろう、みたいな話はしています」
――僕なんかからしたら、〈せっかく積み上げてきたのにリセットしちゃうなんてもったいない!〉という感じなんですけど(笑)。だって、こんなにカッコいいアルバムを作っておいてですよ? いま現在、日本のみならず世界を見渡しても、ここまで鋭くて、ストイックで、スマートで、狂っているオルタナティヴ・ミュージックは他にないと思いますから。
柴田「あはははは! ありがとうございます(笑)! そうだなぁ……」
――この路線でいけば、オンリーワンな存在になれるんじゃないですか?
柴田「そうなりたいという思いはありますけど……まあ、リセットと言ってもホンマに消えてしまうわけではなくて、もっと新しい刺激を感じたいから距離を置いているんだと思うんですよね。惰性とか流れでそのまま次の作品を作ってしまうより、ちょっと時間を空けたほうがおもしろい音楽ができるんちゃうかな? とか、そんな感じなんですけどね。まあでも、次のアルバムはやっぱり『IONIZATION』みたいなことはやらないと思いますよ」
――やっぱり、おもしろくない?
柴田「そうですね。でも、リセットした結果また同じことをやっている可能性もあるんですけど(笑)」
――柴田さんって、自分の創作欲求についてはどのように分析していますか? 新しいものを作りたい、という意識はかなり強い?
柴田「この『IONIZATION』を出すまではライヴが頭のほとんどを占めていたんですよ。でもこのアルバムを作っている最中から、音楽を作るほうに目覚めてきている気はしているんです。ドラムの音こだわったりとか、それだけでもいろいろなことができるなぁって。考え方は、変わってきているかもしれないですね」
――音作りの勉強を突き詰めるかもしれない?
柴田「それはあるかもしれないですけど、そうなるってわかっていたらやらないかもしれないし(笑)。常に予想は裏切りたいです」
――常に予想を裏切ることって、ヨルズにとってすごく大事なことですよね。
柴田「すごく大事ですね」
――具体的に他のバンドを意識しているわけではないとは思うのですが、あきらかに他がまだ手を付けていないことをやりたがってしまうというか。
柴田「その思いは、すごく強いです」
―― 一時期、ヨルズも〈ポスト関西ゼロ世代〉の一群のなかのひとつだと捉えられていた時期もあったかと思うのですが、その当時はどんな風に思っていました?
柴田「外側から見れば同じように見えてしまうのかもしれないですけど、やっている本人たちとしては、全然音楽性も違うし、誰ともつるんでないし、複雑な気持ちでしたけどね。僕個人的には、〈関西ゼロ世代〉と呼ばれていたバンドって全然好きじゃなかったんですよ。だから、共感もなくて。変な感じでしたね」
――ではいま、ヨルズがシンパシーを感じるような存在は?
柴田「うーん……あんまりないかもしれないですね。バンドも、僕自身も、かなり個人主義かもしれないです。僕としては、勝手に刺激を見つけていきたいというか。新しい刺激って、外の問題というよりも自分の問題やと思うんですよ。自分が何かに対して〈これは刺激的やな〉と思えれば、ホンマにそれで良くて。だから最近の音楽とかまったく知らないし、あんまり興味もない。僕たち、浮世離れしてるかもしれないですね(笑)」