インタビュー

YOLZ IN THE SKY 『IONIZATION』 felicity



  彼らのライヴを目撃したのはこれまでにたった1度きり――昨年の〈フジロック〉における〈ROOKIE A GO-GO〉のステージのみだが、冒頭の“OH MY BALANCE!”を聴いた瞬間、あの日、深夜の暗闇のなかに渦巻いていた不穏な空気がぶわっと甦ってきて慄然とした。

 「踊りませんか? YOLZ IN THE SKYです」――そう告げられた直後に問答無用で引きずり込まれた前述の暗黒ダンス空間は、吉田肇(PANICSMILE)をプロデューサーに迎えたニュー・アルバム『IONIZATION』でも体現することができる。彼らが鳴らすダンス・ミュージックは、〈享楽的〉とか〈開放的〉といった比喩とは真逆に位置する、身体を揺らしているうちにどんどん追い詰められていくような緊張感を煽られる特異なものだ。表情を完璧に押し殺し、機械的な統制を保ち続けるハンマー・ビート。ダークな空間系から不協和音上等のノイズ、はたまたチープなアナログ・シンセ風と、独自すぎるエフェクト使いで圧倒するギター。それらの低空飛行サウンドを切り裂いて、はるか上方へと突き抜けていく超絶ハイトーン・ヴォイス――。カンやノイ!をはじめとしたクラウト・ロック勢や、ジョイ・ディヴィジョンやPILなどのポスト・パンク・バンドが纏う仄暗く沈むような質感は前作と同様に踏襲/増幅しているように思えるが、本作で特に言及すべきは、さらにテクノへも接近している点。プラスティックマンあたりを想起させるスッカスカなミニマル路線を人力で、かつロックとして成立させた表題曲は、聴き進むほどに立ち現れる未体験ゾーンがあまりにもスリリングで、もはや笑いすら込み上げてきてしまった次第。この〈唯一無二感〉は……世界で勝負できるのではないかと。

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年11月04日 18:00

更新: 2009年11月04日 18:47

文/土田 真弓

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