チーナ(2)
――出自がクラシックっていう個性を活かしつつも、バンド・サウンドになっている。さらに言えば、ロック・スピリットを感じる部分もある。クラシック畑の3人は、そこから別のところに逸脱していきたいとか、この編成でロックをやりたいとか、そういう意識はありました?
椎名「ロックがどう、っていうよりも、最初はみんな、コンプレックスがあったと思うんです。ヴァイオリンは求められるものがすごい限られてたり」
柴「うん」
椎名「ストリングスはどこかにサポートに行っても、〈キレイに弾いてればいいから〉って言われる。ベースだってもっといろんな表現があって、例えばソロとかだってできるのに、そういうことをやれる場がなかったり。私は私で、アコースティックな弾き語りをやってた頃、急に〈ウワァ~!〉とかいう声を出すと、〈何がやりたいんだろ? この子〉って思われてしまったりとか、そういうコンプレックスがあって、それをどんどん自分たちでなくしていきたいっていう気持ちがあったんですよね。そういうのもあって、ドラムもパーカッションじゃなくドラム・セットになって、ギターも最初はアコギだったんですけどエレキになって……別にロックをめざしてたわけじゃないんですけど(笑)、音楽ってキレイなものだけじゃない、もっと強い音に絶対できるんだ、って開拓していった結果、周りから〈ロックだね〉って言われるようになってきて。それがものすごい嬉しくて、最近は〈ロックを意識してやってるんです〉みたいなことを言うようになったんですけど(笑)」
――楽器に対する固定概念からどんどん逸脱していく過程がロックなんじゃないんですかね?
柴「最初にサポート始めた時は、いままでの経験で〈こういう曲にはここから駆け上がりでダーッと盛り上げて……〉っていうのがあったんですけど」
椎名「ありきたりな感じね(笑)」
柴「うん。でも(椎名に)〈そんなキレイな音じゃなくていいんだよね〉って言われた時に、〈あ、この楽器をそういうふうに扱っていいんだ〉って、新しい発見があったんですね。いままではキレイな音であることが絶対で、〈奏でる〉っていう感じの表現方法が主流でやってたんですけど、〈ヴァイオリンで汚い音か!〉っていう。ただ汚なければいいっていうことではないんですけど、激しさを出したりとか、ヴァイオリンってけっこうおもしろいことができるんじゃないかなと思って。やっぱりアコースティックな楽器を使っているので、ハウリングを起こしやすかったりとか、音量がどうしても出切らなかったりとか、いろんな問題にどんどんぶつかるんですけど、それをなんとかしようと考えていくのがすごく楽しくって」
――チーナのサウンドなら、ハウリングとか入っててもいいんじゃないですか(全員笑)?
柴「(笑)そうですね。ガツンと出したいっていうのはありますね。そこでエレキに頼ってしまうのではなくて、使っている楽器の可能性をどれだけ広げられるか、で」
椎名「おっきい音だけがロックじゃないっていうのは、よく言ってます(笑)。チーナは楽器編成的にもレンジの広い音を出せるので、その表現でなんとか……暗さとか(笑)、強さとかも出すようにみんなで日々格闘してるんですけど」