チーナ 『Shupoon!!』 SOPHORI FIELD COMPANY/colla
UA『turbo』を彷彿とさせるド迫力のジャケからも想起されるように、チーナのファースト・ミニ・アルバム『Shupoon!!』のキモにあるのは、ソングライターの椎名杏子が綴る無器用なほどに真っ正直で、ほんのりアヴァンな歌世界にある……が、〈その場が盛り上がればいいですか?/しかるべき対策を〉〈君がどんなに泣いても/誰もわかってくれないよ/良かったね〉といった、ふいに言われたらうろたえてしまいそうな言葉の数々を軽やかなクラシック・ポップとして成立させているものは、言うまでもなく5人全員による精緻なアンサンブルである。
勢いよく吹き抜ける風の音、ゆっくりと滴り落ちる水の音、遠くから悲しげに聴こえてくる鳥の鳴き声――というのは筆者が膨らませた想像にすぎないが、日常の一部を音で表現することにより風景そのものを描き出すピアノ、ヴァイオリン、コントラバスの旋律は、たおやかでありながら、その一音一音には〈美しくて優雅で……〉というクラシック楽器への固定概念を打ち破る多彩なアイデアが盛り込まれている。そこへギター&ドラムスがバンド・サウンドとしてのタフさを添えることで、オーガニックかつダイナミックな独自のポップ・ミュージックを創出しているのだ。
編成は異なるが、本作を初めて耳にした時にふと思い出したのはクラムボンの諸作だった。ピアノを弾きながら歌う女の子が中心、という単純な共通項以上に、考え抜かれた音楽性を自然体で提示する佇まいや、さり気なく顔を覗かせるプレイヤーとしてのファイター気質に、上述の3人組と相通じるものを感じたのだと思う。クラムボンはロック・フェスからダンス・ミュージックの祭典まで招聘されるボーダレスな立ち位置を確立しているが、チーナにも同様に、幅広いリスナー層を獲得できるポテンシャルが備わっているような気がする。
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