チーナ(4)
――(笑)まあ、“マトリョーシカ”では、みなさんのいい半狂乱ぶりが聴けると。そこには、先ほど話に出た〈楽器の可能性の開拓〉みたいなところが反映されていたりもする?
柴「そうですね。まず〈半狂乱〉って言われたところで、半狂乱で弾いたらいいのか、半狂乱の音を選んだらいいのか、っていうのをまず考えて、これは音だな、と。間奏の最初の部分とかは一個一個の音を拾おうとすれば拾えるんですけど、おっきいうねりがあって、そのあとに〈バン!〉って弾けるような感じを出したかったというか。最後は、声は出さないですけど叫んじゃおう!みたいな、楽器を使ってどこまでできるか、っていうところはすごく凝りましたね」
――そういうふうに特に凝った部分は、他の曲にもあります?
柴「〈木の音〉っていうのがヴァイオリンの持っている特性なので、“blue”ではどこまで木を響かせた音を出せるかっていうところで、音飾をすごいこだわって作りました」
――〈木の音〉って?
柴「ヴァイオリンって上と下に板があるんですけど、そのなかで響くんですよね、音が。その響きを出せる音――倍音がうまく使える音っていうのを選んで、あとこの曲はベースとも話し合いながら作ったので、きれいなアンサンブルが出るようにこだわりました」
――では、コントラの聴きどころは?
林「私も同じで、“マトリョーシカ”の間奏の部分ですね。半狂乱って言われてどうしよう?って思いながらピアノと歌だけのデモを何回も聴いてて、〈あっ、グリッサンドが下がってきたらおもしろいかもしれないな〉と思って、最後に〈トゥゥゥ~〉っていうのを入れました。レコーディングでもけっこう渾身のテイクがとれたと思ってるので(笑)、気に入ってます。あとは全体的に楽器の音だけじゃなくて、あんまり音程がない音――フワ~ッていう感じの音を使ってたり。“blue”の最初のほうとかそうなんですけど、そういうことができるのもコントラバスの特性なので、ポイントだと思ってます(笑)」
――ギターはどうですか?
西依「僕はメインのギターの他にマイクロコルグっていう鍵盤も使ってたりするので、ギターでどこまでできるかっていうよりかは、チーナの音楽をより良くするにはどの音が必要だろう?っていうところでフレーズないし音を考えたりしてますね。音の高さ的にもヴァイオリンがいちばん近い楽器なんでそこを意識しつつ、ピアノも下から上まで出してくるんで、その2人をメインに考えて、ここはピアノと近付こうとか、すごいマニアックなところで同じことを弾いてみようとか(笑)、そういう感じですね」
椎名「ニスみたいなんだよね」
――ニス?
西依「そうですね。みんなの穴埋めをしてる(笑)」
椎名「木の箱を作る時、ニスを塗るとすごいキレイになるじゃないですか(笑)」
西依「そう、最終仕上げではないですけど、そういうイメージを持ってもらえると嬉しいですね」
――じゃあ最後に、そんなニス役の西依さんの聴きどころを伺って締めましょうか。
西依「ギターでそれを言うのならば、“マトリョーシカ”のいちばん最後の〈キキッ!〉っていう音ですね。あれ、ホントはしっかり止めることになってたんですけど、止めようと思ったら〈キキッ!〉って鳴っちゃって〈ヤベッ!〉って思って。でも、プレイバックで聴いたらそれが良くて、堀さん(ディレクター)に〈あれ消さなくていいんじゃないですか?〉って言ったら、〈残そう〉ってことになって(笑)」
――迸る勢いというか、先ほど椎名さんがおっしゃってた〈本作に込められたエネルギー〉がそこに凝縮されてるとか?
西依「そうですね。あそこがすべてです(笑)」
椎名・柴・林「ええ~(笑)!?」
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