インタビュー

ロング・レヴュー:LUNKHEAD 『VOX e.p.』

 

LUNKHEAD_J170

過去作がどうこうという話ではないが、一聴して〈これはLUNKHEAD史上最高傑作ではないか〉と思わずにはいられない更新感がある。前作から約半年という短いスパンで届いた6曲入りの新作『VOX e.p.』は、ジャケットから想像されるように2009年作『ATOM』の延長線上にある……が、冒頭の“WORLD IS MINE”からして、〈鳴り〉がこれまでの作品と比較してまったくと言っていいほどに違うのだ。よりヘヴィーに、ラウドに、ダイナミックにデザインされたギター・サウンドは荒ぶる音塊となって鼓膜を襲うが、そんななかでもはっきりと、そして切実に、絞り出された言葉/叫びが響いてくる。

歌詞のテーマは〈声〉。『孵化』『ATOM』の2作品を通じて自身の本質を見つめ直し、ふたたびトップギアで走り出したバンドの今後を〈利口なフリしてないで/両の目を見開いて/声を枯らせ〉と高らかに宣言する“WORLD IS MINE”をはじめ、すべての曲の鍵として登場するこの言葉が、6通りのドラマを描いている。エッジーな楽曲と呼応した攻撃的な詞が多いが、小高が自身の子供に向けて書いたというラスト曲“echo”はやはり異色であり、新機軸。打ち込みのリズムと転がる電子音、空間的なギターが穏やかな視線の言葉と共にセンシティヴな音世界を押し広げ、激しい楽曲が揃った本作を浄化するように柔らかな余韻を残す。

随所に挿入されるハード・ロックばりのギター・リフ/ソロも含め、打算も妥協もなく、楽しんで音を鳴らすことに重きを置くことでみずからの枷を外し、底力を提示した本作。結成10周年を通過しながらもいまだ進化の途中にあることの証明として、上々の一作と言えるだろう。

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掲載: 2010年01月20日 18:02

更新: 2010年02月10日 19:00

文/土田真弓

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