PE'Z 『1・2・MAX』 ロング・レヴュー
俺たちに助走はいらないぜ!――と言わんばかりにいきなりマックスなタイトルからして最高!なPE'Zの新作『1・2・MAX』は、その冠に違わぬハイテンションぶりで約30分を一気に駆け抜ける。
suzumokuをヴォーカルに迎えた歌ものバンド、pez'mokuとして活動中であった昨年に結成10周年を迎えた彼らだが、その後に発表する初のオリジナル・アルバムとなる本作では、その音楽性と呼応してヴィジュアルも和装から洋装へチェンジ。〈侍ジャズ〉の異名を取る彼らとは言え、単純に和テイスト+ジャズという数式では解明できない多国籍ビートは今回も全開で、加えて初期作品を彷彿とさせる初期衝動も注入されているわけだから、もう突き抜けぶりがとんでもないことになっている。
アダルトなムードのしっとり系ジャズから超高速2ビートへ振り切る運動会クラシック“Csikos Post ~クシコスポスト~”のカヴァーやヒイズミが渾身の力で絶叫するクライマックスに胸が熱くなるタイトル曲、70~80年代の刑事ドラマのエンディングあたりで流れていそうな哀愁のトランペットがなぜかサンバ風のリズムの上で踊る“サクラロード ~夢ノトオリミチ~”をはじめ、スカもファンクもソウルもブルースも破天荒極まりないパンク・スピリットに充填して勢いのままに乱れ打つ! そんなサウンドを前にしたら、そりゃあ万国旗も飾り付けたくなるよ(ジャケ参照)、やみくもに駆け出したくもなるよ、原稿にもやたらと〈!〉を使いたくなるよ(抑えました)……と、あらん限りの昂揚感を引きずり出されたうえに降参するしかない。そんな無敵の一枚だ。
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