LONG REVIEW――DJ Deckstream 『Music Castle II』
DJ Deckstreamが2009年にリリースした『Music Castle』は、ガンズ・アンド・ローゼズからスティーヴィー・ワンダーまで多岐に渡るアーティストの楽曲を取り上げ、等しくジャジー&スムーズな洒脱チューンに変換してみせたコンセプチュアルなカヴァー集だった。あれから約1年を経て、お待ちかねの続編『Music Catsle II』が到着。今回もアクロバティックな選曲に驚かされるし、理屈抜きで気持ち良いサウンドの応酬にトロットロに溶かされる。チルでリラクシンな要素に満ち満ちた悦楽盤だ。
変幻自在なアレンジメントも素晴らしい。ジャジーの範疇を超えてジャズそのものと化したニルヴァーナ“Smells Like Teen Spirit”、アコギやピアノが踊る可憐なR&Bとなったスキッド・ロウ“I Remember You”などの荒業カヴァーを揃える一方で、レディオヘッド“Creep”やカーディガンズ“Carnival”では繊細な手つきで原曲のエレガンスを汲み取ってみせる。ヴォーカル曲の比重が上がっている分、前作以上にキャッチーだし、メロディアスな音作りを得意とするDJ Deckstreamのポップセンスが存分に発揮された作品と言えるだろう。
そんなアルバムのラストを飾るのはコモンのクラシック“Retrospect For Life”なのだが、この曲だけは原曲を忠実に再現するカヴァーとなっている。そこにDJ Deckstreamのヒップホップに対する愛情と敬意を感じた……というのは深読みしすぎ? そう言えば前作『Music Catsle』の最後にも、マルコム・マクラーレンのオールドスクール名曲“World Famous”の完コピに近いカヴァーが配されていたのだった。
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