インタビュー

禁断の毛皮に包まれたこれまでの作品を覗いてみれば……

 

ファースト・アルバムは2006年に発表された『戦争をしよう』。荒々しいガレージ・ロックで志磨のヴォーカルもいまより遥かにユルく、ちょっとジョニー・サンダースのような印象も受ける。続く、おとぎ話の有馬和樹やソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉らが参加した『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』は、ライヴ活動を積み上げた自信が漲る力作。“REBEL SONG”“犬ロック”など人気曲も多い。そしてストゥージズ時代のイギー・ポップさながらに狂気スレスレの志磨を堪能できるのが2008年5月のミニ・アルバム『Faust C.D.』。ゲーテの戯曲「ファウスト」をモチーフにしたというタイトル曲をはじめ、一見凶暴性のある仕上がりだが、歌詞からは志磨が内面に抱えるナイーヴさも逆に感じ取れる。また、同年12月には両A面シングル『ビューティフル/愛する or die』を発表。相変わらずの粗削りながら、一皮剥けた志磨のソングライターとしての人懐っこさを実感できる3曲入りで、なかでも“ビューティフル”は新世代のためのロック・アンセムとして支持を集めて初の全国的にスマッシュ・ヒットとなり、タワーレコードの邦楽チャートでは初登場16位を記録した。

そして昨年リリースした3作目『Groomy』は楽曲構成にひと工夫が見られるようになっている。そればかりか演奏にはダイナミズムも加わり、スケールの大きなロック・バンドとして一気に成長したところを見せつけた。さらに今年、新作『毛皮のマリーズ』に先駆けて届けられたのがタワーレコード限定のシングル“NO MUSIC, NO LIFE.”。音楽の素晴らしさをオールドタイミーな曲調でユーモラスに伝える志磨のヴォーカルが味わい深い。

 

▼文中に登場した毛皮のマリーズの作品を紹介。

左から、2006年作『戦争をしよう』、2007年作『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』、2008年のミニ・アルバム『Faust C.D.』(すべてDECKREC)、同年のシングル“ビューティフル”、2009年作『Gloomy』(共にJESUS)、2010年のシングル“NO MUSIC, NO LIFE.”(コロムビア)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年06月02日 18:30

更新: 2010年06月02日 21:58

ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)

文/岡村詩野