まだまだいるんです。見どころたっぷりなロックンロール・バンドを先取りしちゃおう! ――(2)
【黒猫チェルシー】
海外のルーツ・ロックに対する愛情と日本の初期パンクの精神性を持ち、それを10代らしい新鮮な感覚でブルージーかつサイケデリックなガレージ・ロックとして鳴らす彼らは、同郷の踊ってばかりの国と共にKING BROTHERS以降の神戸を更新し、全国へ打って出る期待の星だ。ヴォーカル=渡辺大地の映画出演を経て、毛皮のマリーズの越川和磨がエンジニアとして参加し、ミドリの後藤まりこもゲストに迎えた2枚目のミニ・アルバムに続く、待望のメジャー・デビュー・シングルが5月に登場するぞ!
【キノコホテル】
矢島美容室のPVにバック・バンドとして出演したことでも話題を呼んだ、真っ赤なミリタリー・ルックに身を包んだ女子4人組。昭和歌謡風の妖艶なヴォーカルを擁し、オルガンをフィーチャーした骨太なガレージ・ロックやグループ・サウンズ直系の音も組み合わせたサウンドは実に幅広く、個性的だ。一見〈イロモノ?〉と思わせつつも、エンジニアはゆらゆら帝国などで知られる中村宗一郎が担当するなど、実は本格派のロック・バンドであるあたりがマリーズとも共通していると言えよう。
【Droog】
新宿レッドクロスから輩出されていることやその見た目も手伝って、マリーズの弟分にも見える。知識/経験共に豊富な先輩に対し、彼らはまだまだこれからの10代のバンドである彼らは、映画「時計仕掛けのオレンジ」に登場する不良仲間からそのバンド名を取ったという大分の4人組。ラモーンズをはじめ初期パンク~ガレージ・ロックの影響を受け、ブランキー・ジェット・シティも呑み込んだような初期衝動型のロックンロールを鳴らす。まだ粗削りながら時流の勢いに乗って花開く可能性も秘めている。
【Lillies and Remains】
ダークなヴィジュアルという点では共通しているものの、ジョイ・ディヴィジョンやニールズ・チルドレンといった海外のゴス・バンドをルーツに持ち、アグレッシヴなポスト・パンクから煌びやかなネオアコまでを横断する、その洋楽的でスタイリッシュなサウンドはマリーズの音楽性とはかけ離れている。とはいえ近年の日本のロックが忘れかけていた美意識の高さ、アート志向を2000年代に取り戻したという点において、やはり両者には通じるものがあるように思うのだ。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2010年06月02日 18:30
更新: 2010年06月02日 21:58
ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)
文/金子厚武