インタビュー

INTERVIEW(3)――その時、その時期の考えを記録していく

 

その時、その時期の考えを記録していく

 

YO-KING_Amain

 

――それにしてのこのCD、盛りだくさんですよね。ボートラも入って5曲も盛っちゃいました。

「そーそーそー。“スペース~拝啓、ジェリー・ガルシア~”がいわゆるファンク・ロックで、カップリングにはヒップホップ風があって、弾き語りがあって、フォーク・ロックがあって。僕の持ってるものの極地を出して、この全体でもスペースを出してる。来た!」

――そこにもスペースが。

「レコーディングしながら〈これだ!〉と思ってたんですよ。ひとつの曲のタイトルでもあるけれども、このミニ・アルバムを象徴する器というか度量というか、〈YO-KING、デカイね〉っていう作品なんですよ。デカイねって思う人は、わかってる人ですね。僕、巨大すぎて、〈あの人わけわかんない〉って言われることも多いんで(笑)。TVとか出ても、変なことしか言ってないからね。おもしろキャラみたいな。でもやっぱり、多少ユーモアがわからないと駄目です。笑えたら楽になるからね、どんな辛いことでも。自分の失敗とかを笑えたら、その時点でスーッと上がっていくもんじゃないですか。ずーっと笑えないで、〈あの野郎、いつかギャフンと言わせてやるぞ〉とか、ネチネチ思ってたら辛いですよ。相手はまったく自分のことを考えてもいないからね。楽しく生きてるから。時間と思考がもったいない……でも、どうですか。僕、変化したと思います? 長い間僕を見ていて。あんま変わんないですか、基本的に」

――う~ん、どうなんですかね。基本は変わらない気もしますけど。

「自分で、その頃の自分がどんな感じだったか、よく思い出せないんですよ。〈こういうことを俺、いつから考え出してたんだろう?〉とか」

――ものすごくトンガッてた時期もありましたよね。『KING OF ROCK』の頃とか。“素晴らしきこの世界”とか、メッセージをガンガン飛ばしてた頃には、怒りとか苛立ちみたいなものを強く感じてましたけど。

「いちばん怒ってた時期はね、90年代前半なんですよ。『KING OF ROCK』は94年に制作してるんですけど、95年の5月にリリースされた時点では、僕の人生の怒り期は、青年期は実は終わってて」

――チ○ポから石が出るのと同時に(笑)。

「そーそーそー(笑)。石のなかに入ってたんだね、怒りがね。そこでスーッと楽になった。怒ってた時期も楽しかったし、いまも楽しいし、それは間違いないんですけど。ただやっぱり、20代にちゃんと怒れて良かったなとは思います。いまは20代から〈愛〉とか、〈お母さんありがとう〉とか、〈友達がいてくれて良かった〉みたいな歌がすごく多いでしょ。それって、40代ぐらいで歌ったら説得力もあるんだけど、もうちょっと毒とか怒りとか苛立ちとか、あとで思ったら恥ずかしいこととかを歌ったほうがいいと思うんですよね。確信犯的に。〈たぶん10年後の俺が見たらすごく恥ずかしいだろうけど、いまこう思うからやるしかないな〉って。だって、ものの本でも読めば、30、40、50の心持ちだって、慮れるわけじゃないですか、20代でも。〈でもやるんだよ〉というね。だから『KING OF ROCK』とかあの頃の曲をいま聴くと、歌詞の枝葉末節では〈俺はいまはこう思わない〉というのはたくさんあります」

――でも、そういうもんでしょう。

「そういうもんですよね。だけど流行歌だから、もちろんいまでもそのまま歌いますけどね。ポップスってそういうことなんだろうなと思って。その年、その時期の考えを記録していく。たぶん、文章だけだとキツイと思うんですよ。音楽があって、リズムがあって、メロディーがあって、いろんな楽器があって。だから歌詞ありきじゃないんですよ、僕って。歌詞寄りの話をずっとしちゃいましたけど、音楽があって、そこにその時の自分が納得いく歌詞をつけていくというだけのことだったんですよ」

 

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掲載: 2010年07月21日 17:59

更新: 2010年07月21日 18:22

インタヴュー・文/宮本英夫