インタビュー

INTERVIEW(2)――イビツさがいい

 

イビツさがいい

 

──ええっと、枕はこのへんにして、『マリアンヌの休日』ですよ。休日ってことでオリジナルの曲はお休みしてカヴァー集。メジャー・デビューのタイミングでは、GSとか歌謡曲というキーワードはさらりと流していた印象のキノコホテルですけど。

マリアンヌ「こちらから〈昭和歌謡〉とか〈GS〉っていうキーワードは投げた途端にものすごくチープで恥ずかしいものになってしまうのでさらりと流してたんですけど、実際にはさらりと受け取ってもらえなかったみたいで。結局ね、こうやってミリタリー・ルックを着てて、こういうギターの音とオルガンと、でまあ私の歌い回しのせいもあって、〈昭和昭和昭和〉みたいなイメージで捉えられちゃうんですけど」

──〈昭和昭和昭和〉でクレイジーケンバンドの“昭和レジデンス”を思い出しましたが、横山剣さんも昭和歌謡って言われることにすごく抵抗があったと言ってましたね。

マリアンヌ「嫌だと思いますよ。要するに、それも好きだけど、それだけをやりたいわけじゃないっていう。私たちはヴィジュアルがこうだから誤解されやすいですけど、服装がもっとラフで、それこそTシャツにGパンみたいなものだったら、受け取られ方がぜんぜん違うものになったと思うの。まあ、こういうヴィジュアルでやってる以上、ある程度の覚悟はしてましたけど」

──カヴァー盤ってことで改めてお訊きしますが、GSや歌謡曲、そのへんにシビレたきっかけって何だったんですか?

マリアンヌ「ちょうど私が十代の頃、クラシックばっかり聴いていた時期からちょっと脱却しつつあって、その頃にGSとか歌謡曲のコンピレーションがばばばーっと出てたの。以前にもお話したかと思うんですが、近田さん(近田春夫&ハルヲフォン)の『電撃的東京』に衝撃を受けたのもその頃で、レコード屋さんでそういうCDをあれこれと試聴してみたんです。J-PopのCDを試聴してもピンと来なかったけど、そのへんのCDはおもしろくって。歌うまいなとか、アレンジ格好良いなとか、なんか肌に合ったのよね。まあ、交通事故みたいなものかしら。すごく無節操につまみ食いしてた結果がこうなったみたいな」

 

イザベル_A

 

──ありあまる音楽的好奇心の結果ということですね。

マリアンヌ「GSとか歌謡曲は、ダサイんだかカッコイイんだかわかんないような……私、昔からA級よりもB級みたいなものが好きになる傾向があると思うの。それは音楽に限らず、なんとなく。本当に隙のない格好良いものよりも、ちょっとプッと吹いちゃうようなもののほうが愛嬌があって好きになるというか、クセになる。GSなんてまさにそうですよね。本人たちはすごく格好付けてやってるのかもしれないですけど、これどう考えても可笑しいよねとか、ヘンな衣装着せられちゃって可哀相だよねとか、そういう楽しみ方があって」

──イビツなものに惹かれちゃうというか。

マリアンヌ「そうそう、イビツさがいいのよ。格好良くなりきれていないところというか、そういうのが当時の日本人っぽい」

──以前、スクービードゥーのリーダーが、音楽はノイズ成分が大事って言ってました。本人たちがすごくキメて作った部分よりも、他人はどうでもいいような部分に惹かれたりするって。これ、実は武田鉄矢の受け売りらしいんですが(笑)。

マリアンヌ「確かに、ムダのないもの隙のないものよりも、むしろそういうものがあったほうが印象に残るのかもしれませんね。その〈違和感〉が印象的なんでしょうね。ただ格好良いなっていう曲はするっと流れていっちゃうけど、そこで〈えっ、そのギター・ソロ唐突でヘン!〉とか〈このコーラスなによ!?〉っていうのがあってこそなのかもしれないですね」

──イザベルさんも、そのへんの音楽にはどっぷりハマったクチでしたよね。

イザベル「聴いてましたね。いまも聴いてますよ。いわゆるGS的なものも聴いてたし、バンドとかまだやってないクソガキの頃から聴いてましたね。まわりの友達が知らないから、ちょっとした優越感みたいなものが微妙にあったかもしれないですけど、結局誰にも自慢ができなかったっていう」

マリアンヌ「そうそう。他人に聴かせても、〈イマイチだった〉って言って返されるのよね」

イザベル「浅草で買ったブロマイド見せたら、〈なにこれ? キモイ!〉みたいな(笑)」

──大方は笑いものにしますよね。

マリアンヌ「ですよね」

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掲載: 2010年08月04日 18:00

インタヴュー・文/久保田泰平