インタビュー

LONG REVIEW――キノコホテル 『マリアンヌの休日』

 

キノコホテル_J170

キノコホテルの新作は、彼女たちのルーツともいうべき昭和の名曲を取り上げたカヴァー・ミニ・アルバム。近田春夫&ハルヲフォンやクレイジーケンバンドが採り上げたことで知られる“真夜中のエンジェルベイビー”(平山三紀)はともかく、“ピーコックベイビー”(大原麗子)、“恋は気分”(ポピーズ)、“恋はふりむかない”(リンガーズ)、“謎の女B”(平岡精二/曽我町子)、“山猫の唄”(エルザ)など、収録された楽曲は67年~75年に発表された知る人ぞ知る名(迷)曲揃い。あまりにもカルトな選曲に一瞬あっけにとられるが、6曲通して聴くと、歌謡曲やGSを偏愛する昭和ワナビーズ特有のB級自慢やディテールを執拗にトレースするような姿勢が、そっけないまでに皆無なのがよくわかる。

例えば、リンガーズ“恋はふりむかない”のカヴァーでは、カルトGSファンにお馴染みのイントロのイナたいギター・リフが、鬼のように攻撃的なリフにシレっとリアレンジされていたり、楽曲そのものに向かう態度も恐ろしいまでにクールだ(ちなみに筆者が立ち会った某媒体の取材で、バンドの支配人・マリアンヌ東雲は原曲のギター・リフについて〈「ドラえもん」の歌みたいよね〉とバッサリ一刀両断していた……)。

歌謡曲やGSが持つビザール感や禍々しさを無条件に愛でるのではなく、採り入れられる要素は採り入れつつも、ダサいと思う部分はダサいと容赦なく切り捨てる冷静な態度。愛すべき対象にもデレデレせず、〈ツン〉な態度で臨んでいるのが、なんとも彼女たちらしい。今作にはキノコホテルのルーツに対する愛情と距離感がさりげなく表れているように思う。

 

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掲載: 2010年08月04日 18:00

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