INTERVIEW(4)――好きになった覚えはない
好きになった覚えはない
──“恋はふりむかない”(リンガーズ、69年)は、今回のアルバムで唯一男声の原曲で。
マリアンヌ「これ、原曲はすごく垢抜けない、そりゃあ売れなかったわ、って感じよね。好きになった覚えはないんですけど、アレンジの素材として良い曲。原曲はかなり欲のない感じだから。その感じがすごく気に入って、これはもうイジくってやるぞと思って。原曲より格好良くなったと自負してるわ」
──“謎の女B”(平岡精二、67年)はかなり変わった曲ですね。
マリアンヌ「これは初めてライヴで披露した時にかなり反響があったの。〈AとBがある夜会った〉とか〈BはAと~〉とか〈これを仮にCとする〉とか言って話を面倒臭くしてるだけで、歌詞はすごくくだらないんだけど(微笑)。原曲を歌った平岡精二さんがすごく個性的な歌い回しというか、これは私がキノコホテル始める前にたまたま耳にして、何コレ!!って思った曲」
──AとかBとか、ザ・ぼんち“恋のぼんちシート”(81年)を思い出しました。
マリアンヌ「それ、結構言われるのよ」
──あの曲、近田春夫さんが作詞してるんですよ。ここで『電撃的東京』と繋がりましたね!
マリアンヌ「繋がっているのかどうか(笑)」
──では、ラストの“山猫の唄”(エルザ、73年)。
マリアンヌ「この6曲目はなかなか決まらなくてねえ。キノコホテルでカヴァーしてる曲は他にも何曲かあるし、でもなんか……キノコホテルのライヴに来るお客さん、って言ってもどれだけいるかわからないですけど、そういった方々がさんざん聴きましたみたいな曲は何曲か入れたので、さらに過去のレパートリーから持ってくるのは嫌だと思ったの。この曲はオリジナルが結構グルーヴィーで、ヴォーカルがポルノっぽい感じなんですけど、アレンジがすごく格好良くて気になっていた曲……なんですけど、ただちょっと、声の雰囲気とかキーが自分と合わないとか、やりたいけどやることはないだろう、これに似たオリジナルを作るか、ぐらいのことしか考えなかったんですよ。でも、選曲の時にふと思い出して、歌えるかどうかわからないけどこの曲にしてみようって」
──あえて高いハードルを設けたと。
マリアンヌ「案の定、いちばんたいへんだったわ。勝手に自分で選曲したまでは良かったけれども、キーのことを考えてなかったっていう。あと、本来の自分の声質では歌いきれない部分もあって。なんでこんな曲選んだのかしら、私のバカ!って思ったわ。この曲、歌詞がすごくおもしろいのよ。ツンケンとしてお尻フリフリ歩いて注目浴びてるオンナが、あなたに出逢って変わっちゃったみたいな……人間のままで歌うとなんか陳腐な歌謡曲になりそうなところを山猫、それも〈ミス・アマゾン〉って何?みたいな。出だしの〈私は片目の山猫よ〉っていう歌詞で決まりよね、この曲は」
──気まぐれな女性ってよくネコ科の動物に喩えられますよね。つまらないことをお訊きしますが、実際の支配人はネコ科系なんですか。
マリアンヌ「まあ、イヌではないわね。従順じゃないから」
──やはりそうでしたか(笑)。それはともかく、ジャケットもイイですねえ、今回。ヤケドしそうです(笑)。
マリアンヌ「大変だったわ。こういう写真にしようっていうことを決めて撮りに行ったんだけど、この完成形になるまでホント大変で。人のいなさそうな時間帯を見計らって、で、この日はすっごく風が強かったの。砂が目や口に入っちゃうぐらい。海辺で真っ裸になるよりも、風とか砂に対するストレスが大きかったわね。荷物は全部砂まみれ。ブーツのなかからはいまだに砂が出てきます」
──これ、他のメンバーも同じような格好してるのがCDのインナーで見られたりするんですか?
マリアンヌ「私しかできないわよ、こんなこと(笑)」