インタビュー

the telephones 『We Love Telephones!!!』

 

ひたすらハイテンションなモードを経て、新しい局面を迎えているご様子……の新作。そんな心の内を探る!

 

2010年のthe telephonesはひと味違う。プロデューサーにiLLを招いて制作された3月の『A.B.C.D. e.p.』でその予兆を感じ、1か月後にリリースされたセルフ・プロデュースの『Oh My Telephones!!! e.p.』でそれは確信へと変わった。今年で結成5年目を迎えた彼らに、何があったのだろうか?

「実感として、プロっぽくはなりましたね。ライヴやレコーディングのオンとオフの切り替えもやっとできるようになったし。ただ、普段の会話の中身はいまだにゼロですけどね(笑)」(長島涼平、ベース)。

「俺たちが当初めざしていたのは海外のシーンとの同時代性だったんですよ。ただ、結成から5年経ったいま、あまり関係なくなったんですよね。〈俺たちなりにどういう音楽を作るべきか〉とか〈俺たちの音を作らなきゃ〉というモチヴェーションに変わってきたんです。もう海外のバンドにコンプレックスを感じる必要がなくなった。迷いもないですね」(石毛輝、ヴォーカル/ギター/シンセサイザー)。

その迷いのなさは、約1年ぶりのフル・アルバムとなった『We Love Telephones!!!』を聴けば、わかりやすいほどに伝わってくる。前のめりな勢いとキャッチーなテイストはそのままに、多彩さを増したアレンジやリズム・パターン、ハイレヴェルでブレのないリフの普遍的なフレーズに、バンドとしての成長がハッキリと刻まれている。

「イケイケなthe telephonesは去年で終わりにして、今年はもっと説得力を付けていこうとは思っていました。ナカコーさん(iLL)といっしょにやったのも、そういう思いの表れです。ナカコーさんは、今回のアルバムでは5人目のメンバー的な存在ですね」(石毛)。

「ナカコーさんって本当に、音楽に魂を込めるんですよ。僕にはそこまで真似できないことかもしれないけど、ここ最近はずっと意識していますね」(岡本伸明、シンセサイザー/カウベル)。

一方、完全なセルフ・プロデュースによって生み出された6曲では、より自由に音楽を乗りこなしていく。ディスコもエレクトロもニューウェイヴもアイリッシュ・パンクもハイファイな感性で融合させ、ちょっぴりローファイな味を付ける。実に鮮やかな音作りだ。

「セルフ・プロデュースは楽しかったです。自分たちのカラーを思いっきり出せたし、出せるだけのカラーもしっかりと自分たちのなかで見つけることができたので。今回からLogic pro(音楽制作ソフト)を導入したので、やれることの可能性が広がりました。こういう新鮮さはバンドにとって絶対に必要だと俺は思います。初志貫徹を貫くパンクもカッコイイと思うけど、俺たちは変わることを恐れないパンクでありたいんです」(石毛)。

「石毛君がアルバムの方向性をデモで提示してくれたんですけど、ヴァラエティー感がハンパじゃなかった。これをドラムで実現するのは大変だったけど、どれだけ応えられるかが俺の仕事みたいなものですから。実際にリズム・パターンを聴いて勉強しました」(松本誠治、ドラムス)。

そしてもうひとつ特筆すべきは、石毛の書く歌詞である。これまではひたすらにパーティーの参加を促すようなハイテンションさが売りだったが、今回は何やら人間的な心の迷い(?)なども顔を覗かせている。

「まさしく、人間になりました(笑)。今回からは、ちゃんと自分の気持ちで歌詞を書こうと思ったんです。26歳になったので、そろそろ自分のためにも思っていることを歌詞にして出してみようと思って。誤解を恐れずに、人間的な歌詞が書きたくなった。ちょっと大人になったのかも」(石毛)。

「やっと〈これがthe telephonesのアルバムです〉と言えるものが出来ました」と語る石毛と、それに同意するメンバーたち。インディー時代に筆者が初めて会った当時の尖った面影を残しながら、着実にミュージシャンとして成長を重ねてきたことを改めて実感させてくれる。

「いま、すごく心が外側に開いているんですよ。これまでは〈聴きたい人だけが聴けばいい〉とどこかで思っていたところがあったけど、いまは自分を開放して〈みんな、このアルバムを聴いてください!〉という気分。これが売れないんだったらまた心を閉ざすかも。グレちゃいます(笑)」(石毛)。

 

▼関連盤を紹介。

左から、the telephonesも参加したiLLの2010年作『∀』(キューン)、石毛輝がヴォーカルで参加したサントラ『SURELY SOMEDAY』(GRAND TRAX)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年08月27日 22:24

更新: 2010年08月27日 22:24

ソース: bounce 323号 (2010年7月25日発行)

インタビュー・文/冨田明宏

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