INTERVIEW(1)――どれだけ妄想を広げられるか
どれだけ妄想を広げられるか
――ENT DEAL LEAGUEとソロの両方で活動されてますが、MICKYさんのなかではそれぞれどういう位置付けになってるんですか。
「ENTは3人の個性の化学反応みたいなものなんですよね。そのなかでのオレの役割はバランサーだと思ってるんです。〈ニャー!!〉とか言ってるヤツ(DOMINO-KAT)と憂いのあるシンガー(KEN-U)の間に挟まれてバランスを取る役割。MICKY RICH個人としては、結構自分に厳しくやってるつもりです。自分の喜怒哀楽を全部ブチまけてる感じだし、普段のENTとは違う部分が出てると思います」
――3人で始めた当初はそういった立ち位置の違いはそこまで明確じゃなかった?
「そうですね。やっぱりひとりひとりが立たないとって思ってましたし、レゲエのアーティストは基本何人で組もうとそういう意識はあると思いますね。ENTの場合はそれぞれを引き立てたり混ぜたりしながら、うまく3人のいいところをバランス良く見せられるようには考えてて」
――アルバムごとのカラーの違いはソロでも意識してるんですか?
「うん、1曲1曲によってはありますね。例えば、女の子の曲だったら前回こういうふうに作ったから今回は違うアプローチにしようとか。プロデューサーから〈ラヴソングを作ってくれよ〉って言われた場合も、前回とは違う形のものにしようと考えますね。似たようなものを作りたくないし、毎回新しいものにしたい。パーティー・チューンにしても前回が勢いのある曲だったら、今回は4つ打ちのクラップな感じにしようとか。やっぱりオレ自身が変化を求めちゃうんですよ。ライヴでメドレーをやるにしても、同じテーマでカラーが違う曲を作れれば手数も増えますからね」
――それってレゲエ的にも思えますね。例えばジャマイカでも、同じギャル・チューンにしたって違ったテーマで何曲も作ったりするわけじゃないですか。
「そうですね。馬鹿みたいにワイニーの曲が出てますもんね(笑)。それでもセレクターがかけると踊れるし新鮮なのは、何かが違うからですよね。そうじゃないとやるほうが飽きちゃうからかな。そこはオレも同じです」
――ネタを貯めるためにメモをしたりするんですか?
「してますよ。一杯ありすぎて、昔のものは駄目なものも多いですけど。オレの場合、ネタはワンワードなんですよ。例えば、女の子の曲を書こうとした時、そのメモに書いてあった〈ムッチリ〉って言葉から広げていくんです……例えば、ですよ(笑)。女の子をテーマにどれだけの曲を作れるかっていうことになると、〈ムッチリ〉という一言でどれだけ妄想を広げられるかっていう話になりますからね。なので、アーティストはみんな妄想癖があると思います(笑)」
――曲を書くのは早いほうですか?
「曲によりますね。1日で書いちゃったものもありますし、2か月書き直しまくったものもありますし。一時期はギャル・チューンばっかり書いてたんですけど、1曲書いた後にはイカツい曲を作ったりとか、そういうバランスを取っていかないと煮詰まってきちゃう。似たようなフロウとか単語になっちゃうんですよ」
――人間的な成長とか世界観の広がりによってトピックが増えてきたような感覚は?
「ありますね。ダンスホール以外の日常で感じたようなパーソナルな曲は、どのアルバムにも1曲2曲は入れてます。そうしないと一般のお客さんには響かないし、歌を歌っていても、オレも所詮は一般人なんで。子供が生まれれば子供の歌を作るし、そういう曲はいましか歌えないですもんね」
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