LONG REVIEW――MICKY RICH 『YELL』
ENT DEAL LEAGUEでメジャー・デビューを果たしたのに続き、ソロ3枚目となるアルバムもメジャーからのリリースに。グループ、ソロと作品を重ねてきたおかげもあってか、ここに来てアルバムはぐっと肩の力が抜けた仕上がりだ。進みゆくジャマイカの流れに並ばんとする姿勢を映し、これまでハイファイで前のめりな勢いに満ちていたサウンドはカドが取れ、R&B/ヒップホップ的なリディムにも挑戦。全体に聴きやすさが増している。
さらに、フロアやダンス、女の子にまつわるトピックが多かった歌詞の世界観に広がりも。従来のパーティー路線を軽快なシングジェイぶりで聴かせる“INNA PARTY TIME”がある一方、トラック“TWEET ME, TWEET YOU”では虚実さまざま流れゆくTwitterをネタにしている。そのほか、“Angel~ボクらの宝物~”では生まれたわが子への思いをストレートに綴って、父親らしい愛に溢れた一面を窺わせ、さらに“JAMAICA生まれのキミに…”ではレゲエを擬人化したラヴソングを披露。それぞれの曲でその人となりを覗かせている。
ダンスフロアへとまっすぐ向かう、ダンスホール・レゲエファンのための音楽から、より多くのリスナーと向き合う音楽へ。MICKY RICHは『YELL』で一歩、そこに向かって踏み出した。