INTERVIEW(2)――キャッチーに響くものにしたい
キャッチーに響くものにしたい
――今回の『YELL』というアルバムはこれまで以上にトピック的な広がりを感じさせますね。
「今回はアルバムのコンセプトが全然思いつかなかったんですよ。過去2作はしっかりとコンセプトを立てて、それを元に作っていったんですけど。なので、その時の気持ちとか思いを1曲1曲形にしていったんですね。で、8割ぐらい出来るまでノー・コンセプトだったんですけど、周囲のスタッフから〈ちょっと応援する感じの曲が多いよね〉っていう声があって。それで、その8割ぐらいの段階から『YELL』っていうコンセプトを固めていったんです。ただ、基本的にはテーマに縛られてないんで、パーソナルな曲があればダンスホールもあって、2枚目をリリースしてから2010年9月までの自分が表現されてると思います」
――じゃあ、いままで以上に自由に作った感じ?
「そうですね、思いっきり自由に作っちゃいましたね。でも、オレの方向性が自然に応援したり/されたりのほうに向いてたみたいで、後からそれに気付いた感じです」
――どうしてそういう〈YELL〉のほうに自然と向いてたんでしょうね。
「やっぱりレゲエのシーンが下降気味になってきてたり、これまでやってたヤツがいなくなったり、フェスに出てくるようなアーティストが全然増えてなかったり……そういう状況はありますからね。あと、オレも家族に支えられてることを実感したり、そういう心境の変化が出たんじゃないですかね」
――内容に関してもいままでの2作以上に間口が広いですよね。
「そうですね、そういうものにしました。中盤には濃いメッセージも固めてるんですけど、〈レゲエ〉っていうジャンルから入られるよりは、日本のポピュラー・ミュージックの一枚に入っていてもちゃんと届けられるクォリティーにしないと駄目かなと。だって、レゲエを好きな人たちだけにレゲエを届けていても、それだけじゃ絶対に広がらないじゃないですか。どんなポピュラー・ミュージックと並べてもキャッチーに響くものにしたいし、それはどんな音楽でも大事だと思う。セルアウトっていう意味じゃなくてね」
――レゲエのコミュニティーだけに通じる言葉ではなく、もう少し広く伝わる言葉を選んだということですか。
「うん、本当に自分の半径10メートルで起きてることを等身大でわかりやすく伝えようと。オレはマイク持ちだけど、どんな仕事をしてる人とも同じだと思うんですよ。例えば〈こいつらとひとつになれたらな〉っていう思いは誰にも共通するものだと思う」
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