LONG REVIEW――ナイトメア 『10th anniversary album Historical ~ The highest NIGHTMARE ~』
ヴィジュアル系(以下、V系)と総称されるバンドのユニークさが正当に認知されていない国は、もしかしたら日本だけなのではないか?と思う。彼らの風貌も、一括りにはできない多様なサウンドも、まぎれもなく日本で生まれた独自の文化だが、当の日本ではいまだに十把一絡げな扱いも少なくない。しかし、そのオリジナリティーをフラットな視点から見られる海外のリスナーにとって、V系バンドはクールで目新しいものに映るようで、そんな評価が日本のリスナーにもポジティヴなフィードバックをもたらしつつあるとも思う。
さておき、そんなV系バンドの筆頭格であるナイトメアが、活動10周年を記念する2枚組のベスト・アルバム『10th anniversary album Historical ~The highest NIGHTMARE~』を発表した。とはいえ、〈過去の総まとめ〉という体の作品ではない。Disc-1はかつて所属したレーベルでのシングル曲が中心だが、すべて再レコーディングして現在のナイトメアの音として提示。ヴォーカル/演奏の巧みさや、サウンドの明確なカラーに、彼らが積み重ねてきた経験の大きさを窺わせる。楽曲自体はマイナー調の歌謡曲的メロディーを肝に、ハード・ロックやスラッシュ・メタルの様式を受け継いだ重厚な音作りと、シンコペーションを利かせたフレーズを効果的に組み合わせたもの。痛みや喪失、傷や虚しさを見据えた詞が多いのも特徴か。Disc-2は近年のシングル曲を収めており、初期と比べてメリハリの利いた、ドラマ性の高い楽曲が多い印象だ。詞にも希望や前進といった色合いが表れている。新曲“D線上のトラジェディ”も含め、進化するナイトメアの姿が刻み込まれた盤と言えるだろう。
ナイトメアの10年を現在地点から定義する本作は、V系の盛り上がりと並走してきた彼らの軌跡であり、本作がV系シーンの進展を体現している部分も少なからずあるはずだ。