copa salvo 『Los lobos del mambo』
マンボはメロディーがいい
あらゆる音楽が溢れる大都市、東京ならではのハイブリッドなラテン・スタイルを確立してスカやレゲエのリスナーからも支持を得ているcopa salvo。結成10年目を迎えた彼らが新作『Los lobos del mambo』でコンセプトに掲げたのは、ズバリ〈マンボ〉。これまで独自の視点からサルサやブーガルーに取り組んできた彼らだが、今回ほど明確にマンボに焦点を定めたのは初めてのことだ。
「ウチらはキューバ寄りのスタンスでやってきたんですけど、NYサルサの格好良さにもずっとハマってて。サルサの人たちもマンボは聴いてるし、(マンボはサルサにとっての)ルーツみたいなものじゃないですか。マンボはメロディーがいいんですよ。牧歌的だし、キャッチーだし、いい曲が多い。ジャズやヒバロ(プエルトリコのスペイン系農民とその音楽のこと)のエッセンスが入ったハイブリッドな音楽ですしね」(小林博憲、パーカッション:以下同)。
マンボと聞いて、多くの人は〈ア~、ウッ!〉というかけ声の入ったペレス・プラードのスタイルを思い起こすのではないだろうか。どこかユーモラスで陽気なダンス・ミュージック――だが、それはあくまでもペレスのスタイルであって、ティト・プエンテやティト・ロドリゲスらNYの音楽家たちが打ち出したマンボのスタイルは、ルーディーな空気感に満ちた不良のためのダンス・ビートである。今回のアルバムの〈言い出しっぺ〉である小林はこう話す。
「そこは完全にオレの指向なんですけど、あんまり〈ア~、ウッ!〉みたいなのはイヤなんです(笑)。だから、今回あんまりマンボっぽい曲をやってない。とにかくティト・ロドリゲスが好きなんですよ。歌を中心にしたバンドって感じがするのがいい。歌ありきでバンドが編成されてるところがウチらにも近いんじゃないかと」。
小林は「2年目のスカ・バンドがやっちゃいけない曲ってあると思うんですよ。オレらにとってマンボはそういう感じですね。10年やってきたからもういいだろう、と」とも話す。アルバム全編がティト・ロドリゲスやティト・プエンテなど偉人たちのカヴァー。彼らのクラシックに対し、copa salvoは真っ正面から挑んでいる。
「いまの時代はそのまんまやるのが格好いいと思うんですよ。歴史に残るようなイイ曲をオレらがやるとこうなるんですよ、っていうことですよね。あと、自分のなかで編集された音楽に飽きてきちゃったこともあって、今回もまったくといっていいぐらいアレンジは変えてないんです。ただ、吹く人によって原曲とは違ってくるわけですけど」。
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