LONG REVIEW――copa salvo 『Los lobos del mambo』
30年代後半にキューバはハバナで生まれたマンボは、40年代にはNYにも伝わった。そしてクラブ〈パレイディアム〉にてマチートやティト・プエンテ、ティト・ロドリゲスらの率いるマンボ楽団が夜な夜なしのぎを削るなかで磨き上げられて……なんて解説はものの本で読んだけれど、そんな知識が本作『Los lobos del mambo』を楽しむうえで必要とされるわけじゃない。むしろ本作は、〈マンボ=陽気なラテン〉でなんとなく捉えている筆者のようなリスナーを、ルードでダーティー、そして極めてスマートなダンス・ミュージックであるオリジナル・マンボ(のカヴァー)で撃ち抜く、大変危険な代物である(〈マンボの狼たち〉という表題で、すでに血の気の多さが窺えるというものだ)。
そもそもcopa salvoはラテン~キューバ音楽のエッセンスを選り抜き、それをどれだけ〈いまの音〉としてカッコよく鳴らせるか?という命題に挑戦し続けてきた。そのテーマがマンボになっても、彼らの表現の核にあるパンク性はまったく変わらない。そして本作は20名によるビッグバンド編成。力強く打ち鳴らされる打楽器群と、まるでリズム楽器みたいにシンコペーションを利かせた重層的なホーンが、キレの良いフレーズを反復させて、聴き手の体温をたちまち高めていく。そんな精巧なコンビネーションがどこか寄木細工を連想させるビートに乗せて、哀愁を湛えたピアノとヴォーカルがダンスする。このクールさには誰もが無条件でシビれてしまうはず! 聴けばわかる!
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