インタビュー

THE LOWBROWS 『EMOTION』


THE LOWBROWS_特集カバー



いまやりたいことと、ずっと好きなもの


「前作は、リリース当初はあまり反応がなかったんです。だけど、その半年後には溢れるようにアフリカン・ビートを採り入れたクラブ・ミュージックが氾濫して、僕らのトラックもフロアで鳴るようになった。狙い通りの展開でした」(Chaki)。

当人が冷静に、自信を持ってこう分析するのがTHE LOWBROWSの2009年作『Danse Macabre』だ。デビュー当初、国産エレクトロの筆頭と目されていた彼らは、この前作でトライバルな要素などを吸収しながらエレクトロのネクスト・フェイズを提示した。そのサウンドはリリースの時点ではかなり特異に響いたものだが、しかしシーンのトレンドを見事に先導していた、というわけだ。あれから約1年を経て届けられた新作『EMOTION』からは、より大胆な足取りで後続を引き離し、前へ前へとズンズン突き進む彼らの姿が見て取れる。脱エレクトロ……という意識すら感じさせないフラットな地平において、鋭敏な嗅覚で旬のサウンドを選び取り、最新鋭のダンス・ミュージックを紡ぎ上げているのだ。

「実際には、前作の時点から〈エレクトロ〉という括りに関しては特にこだわってなかったんです。そこを意識したら、妙な使命感などに押し潰されてしまう。僕らはダンス・ミュージックであれば何でも好きなので」(Chaki)。

「THE LOWBROWSは〈=エレクトロ〉ではなくて、〈=ミーハー〉なんです。だからダンス・トラックに関しては、移り気なのが私たちのデフォルトだと思ってます。今回は気負いなく、いまやりたいこととずっと好きなもの、両面をストレートに出せたと思っています」(Emi)。

ロッキンな感触のラップ・チューンや煌びやかなディスコ・ハウス、ファニーなダウンテンポに昂揚感たっぷりのユーロ・ポップ……などなど、よくもまあここまでと思ってしまうほどに多種多様なスタイルのサウンドが詰め込まれているのだが、特に耳を惹くのが中盤に畳み掛けられるテクノ/ミニマルの要素を孕んだ楽曲たち。徹底してフロア仕様のマッシヴなビートの応酬に聴き手は必ずや圧倒されるはずだ。

「ミニマル・テクノ自体に関しては、言ってしまうとすでに通りすぎてしまった感じです。ミニマルの美味しい部分を抽出しつつ、“Shoot the Moon”はもっとゲットーな足回りで構成したし、“Bubble”だったらスピード・ガラージやガバを足してみたり。最近UKでファンキーやダブステップ以降のおもしろいビートがいろいろと生まれてきているので、そういった要素も外せないポイントでした」(Chaki)。

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カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年11月24日 18:01

インタヴュー・文/澤田大輔