インタビュー

LONG REVIEW――THE LOWBROWS 『EMOTION』

 

THE LOWBROWS_J

ZEEBRAとのコラボ曲“FIRE”でさらなるブチアゲ路線へと舵を切ったDEXPISTOLSや、最新作『WEEKEND WARRIOR』で全曲インストながらもより広範なクラブ・ミュージックの要素を採り入れてみせた80KIDZなど、世界的なエレクトロの狂騒の渦から登場し、共にサヴァイヴしてきた日本の同胞たちが次々と音楽的更新を進めるなか、当然THE LOWBROWSの2人も新たなフェーズへと歩みを進めていた。ピッグバッグ“Papa's Got A Brand New Pigbag”のカヴァーが代表するように、前作『Danse Macabre』は混沌の向こう側の創造性を示すようなダーティーかつ猥雑な作りが魅力だったが、ニュー・アルバム『EMOTION』は、彼らの主戦場であるクラブの現場感を大切にしつつ、いまやお茶の間的なポピュラリティーを得たエレクトロを触媒として、万人の心と腰に響くストレートでわかりやすい作品に仕立てられている。

執拗なシンセ・リフレインが聴く者の感情を否応なく昂揚させる御大・大沢伸一のプロデュース曲“WOW”を筆頭に、デビュー作『AISHA.EP』の発表を控える女性シンガーのAISHAがエモーショナルな歌声を爆発させた直球ディスコ・ハウス“12 O'Clock Midnight House”や、ブンブン唸る凶暴なベースラインに圧死確実の“Bubble”など、アルバムの中軸となっているのはDJユースなバンギン・チューン。だが、それらのなかに、immiをヴォーカルに迎えた息を呑むほどに美しい半電化ワルツ“Kasha & Marta”が違和感なく置かれていることこそ、本作の魅力とTHE LOWBROWSのしたたかさを雄弁に物語っているような気がする。LAのスターセット、UKのゾンビ・ディスコ・スクワッドという、日本ではそれほど認知度の高くない海外の精鋭をアルバムに誘い、一方で、クール・ノーツ“Make This A Special Night”という懐メロ級のUKソウル名曲を、Tina(!)をフィーチャーしてカヴァーするという離れ業をやってのける彼ら。その絶妙なバランス感覚を、例えばアイドル・グループの楽曲プロデュースといった形で発揮できる機会があるのならば、日本の音楽シーンもK-Popとかに頼ることなくもっと盛り上がるかと思うのだけど……ぜひ実現求む!

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年11月24日 18:01

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