INTERVIEW(3)――ドキュメンタリーでありたい
ドキュメンタリーでありたい
――“Beep Yeah”はどうでしょう?
「これは、まずサウンドの方向としては90年代オルタナという感覚があって。ただ、いつもの自分のやり方だとそこにもっと音を重ねたり、ハーモニーをのっけてポップにするところなんですけど、あえてそこを我慢した。歌い手1人が見えるようなアレンジにしようと思いましたね」
――歌詞にも、パーソナルなイメージがありますよね。この曲を作っていたときの気分はどういう感じだったんでしょう?
「一つの思いやメッセージを書くというより、さまざまな気持ちをドロッと吐き出すというような感じですね。歌い手1人が見えるアレンジというのもそこに繋がる感じです。いまある気持ちを曲にして歌うという、シンプルなシンガー・ソングライティングですね」
――“メールして”はどうでしょう? これは4つ打ちの曲ですけれど。
「この曲は、歌詞を書いたのが先月くらいなんです。テーマとしては最初のブロックで書いてる〈明日をどうか教えてくれと/わかったらすぐメールして〉という、自分としては鬼気迫った気持ちを歌詞にしていて。でも、それを4つ打ちでさらって歌ったら、ポップで可愛くていいなと思って。4つ打ちと言っても、ツヤツヤなちゃんとした打ち込みにしたくなくて」
――宅録っぽい感じがありますよね。
「人力感は絶対に残したかったんですね。ハイパーでサイバーにすると、もう来年のヴァレンタイン頃には聴けなくなる気がするんで(笑)」
――こういう切迫感は、“赤いコート”の歌詞にもリンクしている部分もありますよね。歌詞に個人の思いが沁み出している感じがあって。
「そうですね。さらっと聴けて、歌詞もさらっと見えるんですけど。でも、楽しいことって、そんなに曲にしたいと思わない。その瞬間とその気持ちだけで成立しているんで、いいんですよね。そうじゃなくて、辛さとか葛藤していることとか、どうにもならない気持ちが曲に出てくる。“赤いコート”も表題曲ではあるんですけど、自分のなかでは陰の分量が多いというか。全体通して同じ時期に作ってるんで、繋がっているものはある。どれも吐き出してはいると思うんです。ソングライターとして、作った曲はドキュメンタリーでありたい。そういう気持ちなんですね」
――職人気質のポップソングを作る、というわけではないんですね。
「ポップな曲でいいメロディーを歌いたい、楽しい曲をやって音楽を楽しみたいという気持ちもありますけれど。でも、いまは曲を書いてリリースされるまでのタイムラグもなくやれてるんで。ソングライターとしては、いまの気持ちが曲に出せて、それを聴いてもらえるのはすごくいいなと思うんです」
――今年の頭にゼロに戻ったというところで、スネオヘアーとしての軸というか、変わらないところを再確認したところはありました?
「それはもうベーシックでしかないですね。僕、嘘をついてないよ、ということ。それもいいと思うんですけど、自分のやるものとしては、嘘をつけない。それを共有したいというよりも、引っ掛かってほしいという感じがあるんでしょうね。いいと言われたらすごく嬉しいけれど、曲を聴いた人の気持ちに引っ掛かってく感じがほしいと思って。そのへんは、外に向けて大々的にそういう見せ方をしているわけでもないんですけど。正直に、あるものを発信して聴いてもらえる人がいるというのがいいですね」
――4曲聴いて、サウンドはバラバラですけれど、どの曲にも引っかかるところがあるんですよね。“赤いコート”の〈悲しいNo Thank youです〉とか“Walk & Joy”の〈今、夢、信濃川浮かべたら〉とか、聴いていてBGMにならない瞬間があって。そこがこのミニ・アルバムを聴いていて良かったところでした。
「ああ、それはありがたいですね。まあ、一回そう聴いてもらったら、あとはBGMでお願いしたいんですけど(笑)。毎回そうだと面倒臭いアルバムになるので(笑)。でも、そういうところを感じてもらうのは嬉しいです」
▼スネオヘアーの作品〈その2〉
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