INTERVIEW(4)――届く歌を歌う
届く歌を歌う
――いわゆる音楽活動としての話ですと、映画「アブラクサスの祭」のなかのバンドでのフェス出演もあり、自分がいままでやってきたことの延長線とは違う新しい扉を開いた一年だったとも思うんですけど。そこに関してはどうでしょう?
「具体的には今年の最初にキングさんからリリースのお話があって動き出したんですけれど、それ以前のところでいろいろ仲間とかと話をしていて。ただ、音楽に関して、それまでも自分がやりたくないことをやらされたとかは、一切ないんですよね。すごくいいチームでやってきたので。それはそれで良かったんですけれど、契約が切れたときに、改めてチャンスだという話になって。どうにでもできるという環境を活かさなければしょうがないと思った。そういう目線で、じゃあどうしようということは考えましたね。で、基本的には好きなことを発信できる、シーンにいるということが大事だというのもあるので。こういうところからリリースの話をいただいたのはありがたいし。スタジオに入ってるのも曲作るのも好きだし、最近はそれだけだと思ってやってますね」
――スネオヘアーというソロ・ミュージシャンでやっている以上、ライヴなどで誰といっしょにやるかでもガラッと変わりますよね。
「それはデカイですね。バンドだったら細かくライヴハウスを回るとか、そういう稼働もできるんですけど。一人だと弾き語りで、ということしかできないし。ライヴ自体も滞ったりしますし、間を空けちゃうとそこにも意味ができちゃうし。ただ、音楽の聴き方というか、受け手側のほうの音楽の取り出し方が10年前どころか、ここ1~2年でもまったく変わってきたと思うんで。そういう意味で言うと作って発信するほうも、どんどん変わっていくような気がするんですよね。だから、自分はもっとフットワークを軽くして、これまでは人に任せておいたようなところにも、作り手の目が届くところでやって。それも意識して発信していかないと、とは思ってますね。そこも楽しんで、そこもひっくるめて音楽をやってないと、おもしろくないと思うんですよね」
――2010年の音楽シーンって、いろんなものの潮目が変わった印象がありますね。それを「どんどん音楽がインスタントになっている」と言う人もいれば、逆に「思いつきで好き放題やれる」と捉える人もいる。
「そうですね。イメージだけの話ですけれど、聴きたい人にピンポイントで届ければいいじゃん、って話だと思うんですよね。それくらいの即効性があってもいいというか。で、やっぱり大事になってくるのは、ライヴとか、やり直しのきかないものだと思う。そこに作り手の息が感じられたり、生々しさとか、その人でしかないものの価値があったりする。そういうものが再評価されていくんだと思います。そういう意味でいうと、順当になっているという感じもあって。届け方も含めて音楽を楽しめないと、という気はすごくするんですけど、まずはなんといっても曲。シンガーだったら、届くような歌を歌うということだと思いますし。それでしかないという感じですね」
――このミニ・アルバムでは、「荒川 アンダー ザ ブリッジ」という入り口から、いままで知らなかった人たちがスネオヘアーの音楽に触れるというきっかけもありますしね。
「そうですね。リスナーがなかなか固定のところから動かなくなる時期というのもあるので、そういうのも大きいですね。飲み屋でTwitterを見てたりすると、これまで全然聴いてなかっただろうというような人もたちも、アニメの影響でタイムラインに混じってきたりする。こういうシャッフルはすごくいいなと思います」
――ここから新しくスネオヘアーの音楽に触れる人にとって、どういうふうに響いてもらいたいと思います?
「やっぱり、いいメロディーが好きな人は必ずいますし。僕としては、〈いいメロディーだな、いい曲だな〉って言ってもらえるのが何より嬉しいことですから。〈スネオ氏、よくね?〉みたいなやり取りをされたいですね(笑)」