インタビュー

INTERVIEW(4)――自分なりのエンターテイメント

 

自分なりのエンターテイメント

 

TARO SOUL_A2

 

――改めて、この『So Much Soul』を作ったことで、自分とヒップホップとの距離感って変わったと思う?

「変わってないですね。いちリスナーとして考えたら、やっぱりヒップホップがいまだに最高でいちばん好きな音楽だし、普段聴くのも9割9分ヒップホップ。でも、冷静に見られるようになったのはありますね。ヒップホップにない、他のジャンルのいい部分はいくらでもあるなっていうのもすごい感じるし」

――自分の音楽性も広げていきたいって思いもあるんだ。

「ありますね。だけど、ヒップホップで天下取りたいっていうのはすごい思う。それがいま取れてないってことは負けてるってことだと認めてて、じゃあヒップホップの良さを損なわずに他の音楽と戦っていくにはっていうのをすごく考えてる」

――そこで、TARO SOULというアーティスト像についてはいま、自分でどう捉えてる?

「音の黒さとかノリの黒さがなくなったら、自分が魅力を感じたカッコ良さからかけ離れちゃう気がするので、歌詞や表現の幅が大事。そのなかでTARO SOULのヒップホップっていうのはより揺らがない強固なものになっていくと思うし、自分にしか出せないグルーヴ感とかメロディーライン、どう感情を切り取っていくかっていうところを磨いていきたいと思うし」

――それがアーティストとしての成長ってことになるのかな。

「ホント、歌い手としてどうこうもあるけど、たぶん、人としてどう成長していくかによって全然変わってくるのかなと思ってて。ホント、いままではヒップホップのことだけで、人間としてどう成長していこうとかマジ考えてなかった(笑)。でも、一度自分のヒップホップ観を信じられるようになると、逆にいろいろ考えすぎなくて済むから、そうすることで一人の人間としてどうかを考える余裕が出てきたし、そこと向き合う気持ちの余裕もできて」

――人間としての成長が自分の音楽を良くしていく、と。

「音楽やめる気はないし、一生続けていくものだと思ってるから、確かに毎作品が勝負で、いままでついてきてくれた人たちを裏切ってしまうんじゃないかっていう恐怖感もあるけど、自分がどう成長していくかが大事。その時その時、ガッと根を詰めて作った作品はすごく美しいものだし尊いものだけれども、この先どうなっていくだろう?っていう部分をある意味楽しみながら作って、最終的に喜んでくれる人が多いものを作りたいです」

――今後こういうことを歌っていきたいっていうようなトピックはある?

「自分には社会哲学で大学院行った時期もあるけど、その頃のことってまだ曲にする気になかなかなれてない」

――そういえば、実生活を反映するような曲っていままで書いてないよね。

「いち人間としてどう生きていくかみたいな部分はなんか歌にしてうまく言えなくて。そういう部分をエンターテイメントとして成り立つ表現の仕方は模索してますね。いち人間としての生身の部分とか世の中の出来事に対して思うことも自分なりのエンタテインメントとしてどう切り取るかは、これからもっと追及していきたいです」

――最後に、さらに言っておきたいことがあれば。

「いま、DJ威蔵と2人でタッグを組んでやってるんですけど、ライヴの意味がホント変わってきた。あのライヴ込みでTARO SOULだなっていうのがすごくあって……だからライヴを観てもらって初めて作品が完成するぐらいになってきてる。だからライヴを観てほしいですね」

 

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掲載: 2010年12月15日 17:59

インタヴュー・文/一ノ木裕之