INTERVIEW(2)――MONOBRIGHT感をアップデート
MONOBRIGHT感をアップデート
――そして時系列で考えると、『ACME』よりあと、現在の編成になって制作されたいちばん新しい音源が、今回のミニ・アルバム『淫ビテーション e.p.』ですよね。これまた、『ADVENTURE』に続いて目一杯ヴァラエティーに富んだ作品です。
桃野「ヒダカさんのエッセンスがMONOBRIGHTとどう混じるかっていう実験が、まずありますね」
ヒダカ「元々明るいバンドだと俺は思ってたんですけど、インタヴューとかジャケットの感じで大体損してて、不器用で草食っぽいとこばっかりが強調されちゃってたんで、肉食ですよって」
桃野「タッキーは草食ですけどね(笑)」
ヒダカ「草食っていうか植物だよね。観葉植物(一同笑)。でね、こうやって誰か一人がツッコめばちゃんと場が沸くのに、そういうところが表に出てなかった。音楽的にもそうなんですよね。〈J・マスシスのソロとダイナソーJr.のどっちがいい?〉みたいな話ができるのに、そこが伝わっていかなかったので、伝わるようにしたいなと俺は思ってたんですけど、メンバーになったからにはそれがダイレクトにやれるんで。『ADVENTURE』を聴いたときの俺の印象として、シューゲイズ的な昨今の動きはMONOBRIGHTとして1回完結できたと思ったんで、今回は真逆の、陽性に振り切ったほうをやれたらいいなと思って。陽と陰のバランスでは、陽8割、陰2割ぐらい。次のアルバムは7:3くらいになると思うんですけど。そういう流れはちゃんと見せてあげたいと思いました、タッキーのために。植物だから、陽の当たるところに置かないと枯れちゃうんで(笑)」
――(笑)今回は、結婚に引っ掛けるとしたら2次会を自分たちで散々盛り上げてるような。
ヒダカ「誰も祝ってくれないなら自分たちで」
――冒頭のタートルズ“HAPPY TOGETHER”のカヴァーからヒダカさんが歌ってらっしゃいますよね。
ヒダカ「いきなり乗っ取っちゃったほうがおもしろいかなって」
桃野「それも、いきなりヒダカさんが歌ったらどうか、っていう実験で。あと僕、洋楽は好きなんですけど英語がホントに歌えないので、ずっとインストのカヴァーをやってたんです。でも、そこにヒダカさんが入ったから、これ、英語の歌イケんじゃないかって、一気にテンション上がってやったっていう」
――選曲は桃野さんですか?
ヒダカ「みんなで出し合って、俺が〈これ、いいんじゃない?〉って言ったものが採用された感じです。〈結婚行進曲〉は演ろう、って話で、そこから何にメドレーになったらおもしろいかを考えたときに、いっしょにいてハッピーだっていうところが強調されるし、かといって言うほどハッピーじゃないし、っていうので、この曲はすごいおもしろいなって。聴けば誰でも知ってるんですよね、実は。元々MONOBRIGHTは〈洋楽が好き〉っていうエッセンスを普通にできるのに、お客さんからはユニコーンしかわからない人って思われちゃってるのがもったいないとも思ったし」
――原曲はどちらかというと地味めですよね。それが、歌えるメンバーが加わったのでコーラスも厚くなって、サーフなパワー・ポップ風に様変わりしていて。
桃野「クイーンでも何でもそうなんですけど、僕、元々みんなで合唱してるっていうか、みんなの声が丸聴こえっていう曲が好きで。そういうことがちゃんとできるな、っていう手応えがあったし、そういうポップさは求めていたとこでもあったんで、嬉しいです」
ヒダカ「最近は減っちゃいましたけど、昔は複数のヴォーカルがいるバンドもいっぱいいたんで。例えばルースターズだったら花田(裕之)さんが歌う曲がカッコよかったり、海外だとたまにノエル(・ギャラガー:オアシス)が歌う曲がよかったり、みたいな。そういう感じが出せればと」
桃野「好きなバンドのなかにも、作曲者が2人いるとか、メインが2人いるってありますからね。ファウンテインズ・オブ・ウェインもそうだし、ビートルズもそうだし。それこそペイヴメントですら、メインが違うっていうのもあるんで」
――今回はほとんどが桃野さんの曲ですけど、これからの作品ではお二人とも曲を手掛ける?
桃野「リーダーなんで、基本的には曲を作って提示していこうっていう気持ちはあるんですけど。そこにヒダカさんの曲もあったりとか……」
ヒダカ「がんばれ」
――突き放されてますが(笑)。“HAPPY TOGETHER”のアレンジは、全員で行ったんですか?
ヒダカ「シンガロング感を強調するには4つ打ちじゃねーか、ってところから始まった感じですね」
桃野「ブリット・ポップな、自分らが好きな要素だったりとか――とにかくハッピーな感じ、その象徴的なものにしたいと思ったんで」
――確かに、この曲は今回の作品のシンボル的な楽曲になってますよね。では2曲目“旅立ちと少年2”ですが。
桃野「『あの透明感と少年』っていうミニ・アルバムで“旅立ちと少年”っていう曲を作ったんですけど、ヒダカさんが入ったときに同じテーマをやるとどうなるかが、いちばんわかりやすい曲だと思いますね」
ヒダカ「青年ぐらいにはなったね」
桃野「青年ぐらいになったし、疾走感もある」
――MONOBRIGHT流のストレートさがより強まってるというか。
桃野「ヒダカさんが入って気付いたことなんですけど、案外僕ら、女々しかったんじゃないかなって。逞しくないっていうか。それで、曲が軟体動物のように聴こえる。だけど今回は、ヒダカさんを通して一気にガツッと、男っぷりが上がったというか」
――以前から音圧感はありましたよね。クイーン的な要素も出ていたとは思うんですが、そこがよりわかりやすくなってる。
ヒダカ「例えばクイーンが好きだからってクイーンをそのままやるんじゃなくて、俺が入ったらダークネスみたいにできると思って。クイーンから派生してるいまのバンド感みたいな。そこはBEAT CRUSADERSのときからそうなんですけど、いまとリンクしてないとあんまり意味がないというか。懐かしいものが聴きたければクイーンを聴けばいいわけだから。そういう意味では、“旅立ちと少年2”は元々のMONOBRIGHT感+アップデート感みたいな部分がいちばん出てるかもしれないですね」