INTERVIEW(2)――より直情的に
より直情的に
――曲作りにおいてはどうですか? レーベル移籍第1弾リリースになったのが、昨年4月の配信限定EP『WHEN I GROW UP』だったわけですけれども。あれを作っていた時期は?
コージロー「あれはまさにレーベルから離れていた頃に作った曲ですね。〈これからどういう音楽を突き詰めていこうか?〉と考えていた時を象徴する曲でもあるんです」
エリー「模索中という感じですよね」
コージロー「制作のスタイルもあそこで変えたんですよ。ギターにしてもシンセにしても、打ち込むよりも、弾いたものをそのまま使ったりした。より直情的に、ダイレクトに作るようになった。感覚のままにしよう、頭を使わないで作ろうということはすごく意識してましたね」
エリー「そういうふうに感覚的になってたこともあって、今回の作品はいままで使ってない音色がたくさん入ってるんですよ。いろんな新しい音をたくさん聴いて、そこからいい意味で刺激を受けた。〈こんな音使ったことないから使ってみよう〉って、新しい音をたくさん入れていった。それがいままでといちばん違うところだと思う」
――アルバムを聴いた感触で〈おっ!〉って思ったのって、音圧勝負じゃなくなったところなんですよ。音数も少ないし、わかりやすくエレクトロっぽい音もない。かわりにアコギが入ったり、ちょっとトライバルな音が入ったりしている。ドラムンベースだけどBPMを半分にするとヒップホップっぽく聴こえたりするような、リズムの組み方の妙がある。
コージロー「そう言ってもらえると本当に嬉しい! それが皆に伝わったらいいなって思いますよ」
――例えば、“Higher ground”“Anoasa”のような曲は、ダブステップやドラムンベースの再解釈だと思ったんですけれども。
コージロー「最先端の音楽をいろいろ聴いたり、自分たちでダブステップを無理やり作ってみたり、いろいろやった後に出来たのがその形なんですね。だからダブステップでもドラムンベースでもない定義しづらいもの、結果ヒップホップっぽくも聴こえるものが出来たりして」
――何が新しいかより、体感的な心地良さを重視したところもあったんじゃないかと思うんですけれど、どうでしょう?
コージロー「それはありますね。特に低音の使い方は変わりました。ミックスの話になっちゃいますけど、よりダンス・ミュージックとしての音作りを意識しました。音のレンジを広げて、いわゆる〈痛い音〉というものがない状態。心地良いものを最優先しました。ギターもピーキーな音よりもシャラっとした音色にしたり。でも、そういう音は低音がないとうまく響かないということとか、いろいろなことを意識しましたね」
――そのへんは、前作までのBREMENにはなかった部分だと思うんですけれども。
エリー「そこは年を重ねたのもあると思うんですよね」
コージロー「まあ、感覚的には自分たちのやりたいことをより忠実にやろうってだけですよ」
――エリーさんの歌い方も変わってきていますよね。声を張るんじゃなくて、よりナチュラルに響くところで歌うようになっている。
エリー「そうですね。楽曲の見直しをして、いろいろ音が変わってきた時に、これまでの歌い方じゃ適応しなくなったんですよ。それに、自分の声がわかってきたのもあって。より歌を大事にできるんですよね。もちろん、技術的にも上がってると思いますし。音色も、声も、一つ一つを大事にしたら、余計な味付けをしなくてもいいんじゃないかって思えたんですよね」
コージロー「喋ってる声に忠実にしたら、より素の感情が出せるんじゃないかって」
エリー「だからいま、すごく歌いやすいし、歌ってて楽しいんです。どれが自分の声かわからないくらいエフェクトされてたら、誉められても嬉しくないですからね(笑)。だったら自分の声で歌いたいし」
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