インタビュー

INTERVIEW(2)――リズムから見直した

 

リズムから見直した

 

――〈日本のロック・バンド〉と言ってしまうと、踊ってばかりの国もそうなってしまうけど?

「そうなんですよ! だから、自分らがやってきたこともこれではアカンわと思えてきたんです。このままでは演奏力もないし説得力もないと。と気付いたら、『グッバイ、ガールフレンド』がすごく日本的なアルバムに思えてきたんです。実際、あのアルバムを作った時って、やっぱり歌い方とかフィッシュマンズなんかを意識していたし、音に対しての広がりがまだまだなかったんですよね。でも、〈フジロック〉に出ていろんなバンドを観て、自分の出発点に改めて立ち返ってみたんです。これではダメだと。そうなるとリズムから見直したくなったんです。あと、ディアハンターとかガールズとかを聴いていて、こういうリズム感がいいなあと思えてきてたのもあって」

――リズムに対する意識が変化すると、めざす方向も変化していくし、それに伴って作る曲も変化していく。

「そうです。いや、俺、謙ちゃん(佐藤謙介)のドラムってずっと好きなんですよ。ああいう細かくて軽いリズム。でも、去年あたりからドッシリとした重いリズムが好きになってきて。たぶん、ツアーやってライヴの場数を踏んだというのも大きかったんだと思うんですけど、ライヴで歌ってて気持ち良くなれる曲っていうのはリズムのロウの部分が伝わってくる曲だってことに気付いたんです。そういう気持ちで曲を書いたら、それがメンバーにも伝わっていったんですよね」

――ただ、ディアハンターとかガールズあたりは、ただ低音がガッツリ出てくるような作り方はしてないよね。

「そうそう、そうなんです。だから、なんていうんかな……低音と高音との間の……」

――音の分離?

「そうです! 分離してるんですよね。すごく気持ち良く分離してるんです。例えば、90年代のウィーザーとかって、あれはあれでいいんですけど、音がグシャッと塊になってる……パワー・ポップですよね。ああいうの、もうホントにイヤで(笑)。自分はああいう音の作り方はしたくないんですよ。でも、いまのバンド、ディアハンターとかガールズってそういう音作りじゃないでしょ。それにハッキリ気付いたんですね。でも『グッバイ、ガールフレンド』はまだ音の塊状態だったんです。で、ますますそこから離れたくなって」

――音のイメージが先に見えてきたら、自然と曲調にも変化が生じたと。

「そうですそうです。音の分離がハッキリ伝わるような曲ってことを考えて作りはじめると、ただ歌があって伴奏があって……というようなJ-Pop的な作り方からはどんどん離れていくんですよね」

――それを、ミックスやマスタリングではなく、曲作りの段階で既に念頭に入れると。

「そう。そもそも踊ってばかりの国ってミックスでいじらないんです。録りで全部決めてしまうんですよ」

――へえ!

「いじったとしても微調整レヴェル。あくまで録り音で決めてしまうんです。その後に音を一人歩きさせるんです。早い段階で曲を手放すって感じなんですよね。だから、曲作りや録音の段階である程度、サウンド・プロダクションを決めていったほうがおもしろい仕上がりになるんですよね」

 

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掲載: 2011年01月19日 18:01

更新: 2011年01月19日 20:41

インタヴュー・文/岡村詩野