雅-MIYAVI- 『WHAT'S MY NAME? e.p.』
[ talk battle ]
レーベル移籍第1弾のアルバム『WHAT’S MY NAME?』は、雅-MIYAVI-という超個性派ギタリストとドラマーのBOBO(54-71)とが壮絶なバトルを繰り広げる、ジャンルを超えた快感と創造力溢れる衝撃作だった。その後日談とも言えるニュー・シングル『WHAT’S MY NAME e.p.』は、単なるアルバム・タイトル曲のリカットではなく、初回限定盤と通常盤の2枚に渡って6人のベーシストをフィーチャーした、まったく新しいアイテムとなっている。その驚くべき内容について、また雅-MIYAVI-の追求するオリジナリティーの美学について、参加ベーシストの一人である吉田一郎(ZAZEN BOYS)とのトーク・セッション……いや、トーク・バトルをお届けしよう。
どういう事故が起こるんだろう?
――お二人はいつ頃から面識があるんでしたっけ?
雅-MIYAVI-「超最近です。でも俺はZAZEN BOYSを聴いていたので、一郎くんの存在は知っていて。〈日本妖怪物語〉に出てきそうなあのベーシストは誰なんだ?と(笑)。BOBOくんとの縁もあったから、なんだかんだで話が繋がって、去年の夏に俺のライヴを観に来てくれたのが、たぶん初めての出会いだよね?」
吉田「会ったのは、そうだね。でも僕が雅-MIYAVI-という人を認識したのはかなり前なんですよ。僕が音楽専門学校に行っていた頃、そこの食堂のエレベーターのボタンを押すところの上に、雅-MIYAVI-くんのポスターが貼ってあった。議員さんみたいな人と二人で写っていて〈私は雅-MIYAVI-を応援します〉みたいなやつ。それを見て〈こいつ頭おかしいな〉と」
雅-MIYAVI-「(笑)だいぶ前だね。ソロ・デビューしてすぐの時だ」
吉田「当時はいまほどサクッとYouTubeとか観られなかったから、すぐに音をゲットできなかったんだけど、その後もとにかく〈ぶっ飛んでる〉という話は方々から聞いてきましたから。個人的にはたぶんずっと意識してた人ですね。プレイ・スタイルも含めて」
雅-MIYAVI-「そういうところで最近特に思うのは、人と人同士の磁場みたいなものがあって、もともとどこかで繋がってるということをすごく感じる。でもそのポスターはビックリだな(笑)」
――今回の『WHAT'S MY NAME? e.p.』に至るまでは、どんな経緯で?
雅-MIYAVI-「アルバムが去年の10月に出たんですけど、事務所も独立して、移籍して一発目で、〈ギタリストとして何ができるのか?〉というテーマで、ギターとドラムという必要最低限のものだけで作って。その後タイトル・トラックをもう1回シングルでフィーチャーしようという話になった時に、普通にリカットするだけじゃ意味がないし、逆に削ぎ落として作ったトラックに〈ベースを入れるとどうなるんだろう?〉と。そこで起こるケミストリーやアクシデントを俺もすごく見たかったし、そこでベーシストをバーッとリストアップしていくなかで、〈一郎くんでしょう〉と」
吉田「アクシデントと言えばね」
雅-MIYAVI-「そう。ミスター・アクシデントだから(笑)。アーティストにはそれぞれネジの外し方というのがいろいろあると思うんですけど、彼のネジの外し方がすごく好きで、自分にはないものだからすごくインスパイアされるし、今回自分のトラックに彼のベースをぶち込んだらどういう事故が起こるんだろう?というのがすごく楽しみでした」
吉田「事故になってますね。完全に」
雅-MIYAVI-「もともと俺とBOBOのプレイも事故みたいなものだから(笑)、違う形の事故を見てみたくない?っていうのがあって。ベーシストを6人も呼ぶなんて、セールスやビジネスライクなことを考え出すと、効率は正直良くないんですよ(笑)。でもそうじゃなくて、このプロジェクト自体が自分の作品に対する愛情表現でもあったので、それが実現できて本当に良かった。いろんなスタイルがあって、ベース一つとってもこんな自由があるんだぞっていうか。俺もギターだけどギターの範疇でやってるつもりはないし、ほかの楽器の領域に土足でズカズカ入り込んでるから、逆にこっちにも入って来てほしい。土足でやりあおうぜっていう感じ」
吉田「潰し合いをしたいっていう感覚が僕にはすごくあるんですよ。だからもう、〈死ね〉と。そういう気持ちでやったんですよ。あまりオンラインに乗せるようなワードではないですけど」
雅-MIYAVI-「オンラインは大丈夫だよ(笑)」
吉田「とにかく一聴してわかるのは、トラックというかソングのテンションや空気感というものが、あっち側に完全にイっちゃってるんですね。ドラマーと、ギタリスト兼歌い手が。その状態を食らってるわけですから、こっちも穏やかじゃないですよね。もうムカムカしてるわけですよ」
雅-MIYAVI-「(笑)」
吉田「これは何だと。無茶苦茶にしてやると。そういう気持ちになるんですね。破壊衝動のようなものです。もともと、俺もこの企画をいただいた時に、こういう誘い方をされたら断れないじゃんと思ったわけですよ。名だたるベーシストと横並びにしてくださって、これを断ったら逃げたことになると。企画自体がすごく新しいものだから、手探りでやった部分もあるんですけど、やって、出来て、CDになって、ヘッドホンで、デカいスピーカーで、酒飲みながら聴いたんですけど、これはおもしろい企画だなと。〈これはおもしろいよ雅-MIYAVI-くん〉と。昨日も酔っ払って帰って聴いて、〈これはおもしろいよ雅-MIYAVI-くん〉と」
雅-MIYAVI-「2回言ったね(笑)」
吉田「これはおもしろいですよ」
――3回言いました(笑)。