INTERVIEW(2)――言葉とデザインと音楽の立体構造
言葉とデザインと音楽の立体構造
──で、今回完成した『CD』というアルバムですが、とにかく聴くごとに刺激と発見があるというか。言葉で溢れかえってるようなアルバムですよね。
三浦「前作は、フィールド・レコーディングっていうコンセプトありきで、見切り発車的に素材を録っていって、粘土をこねるようにこねくり回してたらああいうカタチになったんです。だけど、今回は曲ありきで始まって。早い段階で“はじまり”“1234”“あたらしいたましい”っていう、今回の軸になる曲を思い付いたんです」
──1曲目の“はじまり”は、音像の左右に振られた言葉がそれぞれ韻を踏んでいて、左右の言葉が重なると、また別の意味を持つ言葉が浮かび上がるというもので。その立体的な構造が歌詞カードから視覚的にも表現されています。
三浦「確か最初の会議のなかで、歌詞カードから曲を作るみたいなこと言ってたような気がする。今回のブックレットに載せた歌詞カードの原案を書いて会議に持ってったんです。左右が音の配置で縦が時間軸を表してて」
いとう「言葉とデザインと音楽がここまで立体構造になってるんだから、建築から音楽が出来てもいいんじゃないか?とかいうところまで考えたよね」
シゲ「だからせいこうさんも、今回のアルバムに参加してもらうアーティスト候補で建築家の方とか名前挙げたりしてましたね」
──“1234”は、□□□と女優の内田慈さんの4人がそれぞれが1拍子、2拍子、3拍子、4拍子のビートに乗せて歌っていくというおもしろい構成の曲になっています。
三浦「拍数と登場人物が同期してるんですよね。“1234”では、映画の〈マグノリア〉みたいなのをやってみたいなって思って。同じ時間軸のなかで、カメラのカット割りみたいに次々にシーンが変わっていくような」
──6曲目の“あたらしいたましい”も、ひとつのメロディーを男性と女性が同時に別々に歌っていて、それをヴォーカル・トラックを切り替えることで、男性が歌うメロディーと、女性の歌うメロディーや歌詞の意味も、それぞれ単体で成立しているという、これもおもしろい構成の楽曲ですよね。
いとう「そういう意味では、今回あんまり一人称で語ってないかもね。“恋はリズムに乗って”ぐらいじゃないの? 〈私はこう思います〉って言ってるの。あとはみんな、多次元的にひとつの曲を語っていく」
──たとえば、Twitterのタイムラインを眺めてると、いろんな立場の人がいろんなことを語っていて、それがたまにシンクロしたり、共鳴し合ったりするような感覚を覚えることがあるじゃないですか? □□□の今回のアルバムを聴いて、そんなことを連想したんですが。
三浦「確かに“あたらしいたましい”なんかは、特にそうですからね。全然関係ない男女がそれぞれ歌っていることが、いつしかシンクロしてるような感じですよね。たとえば、普通の音楽だったらコード進行とビートとテンポを決めて、それを叩き台にして作っていくってことができると思うんですけど、これってもう、そういう話じゃないから。ほとんど妄想みたいなところありますよね。だって、カタチになるまで他の人にはよくわからないモノじゃないですか? 途中の段階で聴かせても、よくわからないと思いますよ。だから、一人でやらざるを得ないんですね」
──□□□の制作の進め方っていうのは、普通のバンドのやり方とはかなり違うだけに、どういう役割分担がなされてるのかわかりにくい部分もあるんですが、長い時間顔つき合わせてああだこうだ作ったりっていうのもないんですよね。
いとう「うん、集まって作らないからね。作れないっていうか、スケジュール上の都合もあってしょうがないんだけど」
シゲ「まぁ、俺もせいこうさんも忙しいんでね」
三浦「なんか俺だけヒマみたいじゃんか! まあ、間違っちゃいないけど(笑)」
いとう「で、コウシが作ってて、ここに何か必要だってメールがあったら、その場に駆け付ける」
シゲ「そばで〈がんばれ!〉って言ってあげたりね」
いとう「あとは、その場にいれない時は、これ見よがしにTwitterで楽しそうなこと書いたりな(笑)」
三浦「今回、7曲のミックスとマスタリングまで自分でやったんで、なんだろね、まあ、大変でしたね」
シゲ「まあ、一人でやってるから悩んでるんでしょうねぇ~」
いとう「なんだよ、その口調は(笑)」
シゲ「他人と仕事するとあきらめがつきやすいじゃん? だから、より内内的になったんじゃない?」
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