INTERVIEW(2)――自分の素直な気持ち
自分の素直な気持ち
――この曲の歌詞を書くのは難航したということですけれど。まず、もともと歌詞には苦労するほうだったんでしょうか?
蒼山「それまでは、そんなに苦労したことはなかったですね。オケを作ってる段階でメロディーも出てきて、その時に言葉もいっしょに浮かんでくるという作り方だったんで、そこまで悩んだことってなかったんです。でも“カロン”で初めて悩みました」
――それまでみたいにイメージを膨らませるような言葉を並べるだけじゃなくて、どうすれば伝わるかということを意識したことで、歌詞の書き方が変わったんじゃないか、と。
蒼山「そうですね。いつもだったらオケを聴くと歌詞のイメージが湧くんですけど、オケ自体が新しいこともあって湧きづらいというのもあったし。あと、その時はプロデューサーのいしわたり淳治さんと作業をしていて。いしわたりさんには〈いろんな人に聴いてもらうためには、わかりやすい言葉を使ったり、物語にしたりして、みんなが想像しやすいようにしたらいいんじゃないか〉という提案をもらったんです。いろんなヒントもくれて、それによって自分の幅が広がったとは思ったんですけど、でもやっぱり自分の表現したい言葉はそうじゃなかった。そこでの意思の疎通が上手くいかなかったというのもあったし。気負っちゃってたんですよね。これでデビューするんだっていうことがあったから、〈上手く書かなきゃ〉っていう気持ちがあって」
――なるほどね。
蒼山「で、結局レコーディングの日になって。時間がなくなって、またミーティングになったんです。みんなはずっと待ってる状態だったから〈書きたいのを書けばいいんじゃないか〉って話になって。実際、歌詞はもう書いていたんですよ。いろんなパターンはあったんです。自分が納得いってなかっただけで。でももう時間もギリギリだから、それでいくかもしれないって状況まで追い詰められて。そこで初めて〈自分の素直な気持ちを書くしかない〉って思ったんです。曝け出すしかないなって。単語とか情景とか、上手く書こうとか、そんなこと言ってられない。下手くそでもいいから、自分の素直な気持ちを書こうって。そう思ったらすごくスッキリして。次の日の朝、スタジオに向かう電車のなかで歌詞が書けたんです」
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