インタビュー

LONG REVIEW――ねごと “カロン”

 

ねごと_J

もともとはデビュー・ミニ・アルバム『Hello! “Z”』のリード曲候補として書かれた楽曲だけあって、聴き手を掴むパワーがとてつもない表題曲。とは言え、まるでシャガールが描いた〈青いサーカス〉のような、ファンタスティックな情景を想像させる〈夜の歌〉である。

彼女たちが鳴らすバンド・サウンドは、オルタナティヴなエッジと同時に、水彩絵の具を塗り重ねることでグラデーションを施したような透明感も備えていると思う。例えば“カロン”に関して言うなら、ヴィヴィッドな挿し色となるキーボードや軽やかなコーラスワークのみならず、随所で音響的に浮遊感を漂わせるギターや、刻々とフレーズを変えながら走り続けるリズム隊にも細やかなニュアンスが込められていて、加速度的に飛翔する歌を目映く煌めかせる効果的な演出となっている。〈月が孤独に輝く闇夜から太陽が煌々と昇るまで〉というシチュエーションに主人公の心の動きを投影した詞世界――そのクライマックスである〈朝を迎える瞬間〉の得も言われぬ昂揚感は、何度聴いても薄れることはない。

カップリングは、〈あ・あ・ああ・あ♪〉というハーモニーがキャッチーなファンタジー・ソング“彗星シロップ”と、素朴なピアノのフレーズとファニーなメロディーに乗せて友情を歌った“フレンズ”。どの曲も、音と言葉から膨らむイマジネーションの先にはごくシンプルな心情が隠されていて、そのバランス感覚こそが彼女たちのポップネスなのではないかと。そんなふうに感じた。

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年02月23日 18:01

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