INTERVIEW(3)――〈音楽というカテゴリで何か表現しなさい〉というお題
〈音楽というカテゴリで何か表現しなさい〉というお題
――では、ストーリーを作る時に苦労した曲……というか、ストーリーはそもそもどういうふうに作ってるんですか?
「なんか、いちばんおもしろい絵を浮かべるんですよ。なんやろ? (そばにある灰皿を見て)例えば〈灰皿人間ってどんなフォルムだろう?〉から入って、その〈灰皿人間の日常ってどんなんやろう?〉って繋げていく感じですね。だから、登場人物が先に出来上がって、そいつの日常を頭で追ってるうちに〈この部分をストーリーにしたい〉みたいな感じの作り方」
――それは連作になったりすることもあるんですか?
「ああ~、あったらおもしろいですけど、いまのところはないですね。今回ので言うと、それが“イワとイイ関係”かもしれないです。〈エイリアン VS プレデター〉みたいなことですね」
――(笑)その“イワとイイ関係”や“音楽ずるり”のストーリーは、岩下さんが曲を作る過程をそのまま描いているような読み方もできますよね。
「ああ、“イワとイイ関係”はそうです」
――〈ドキドキワクワクお歌詞づくり〉とかありますもんね。“音楽ずるり”はいかがですか? こちらには、〈こうですか/これはロックンですか〉という表現がありますが。
「“音楽ずるり”はバンドを始めたばかりのやつを主人公にして書きましたね。〈こんなことか?〉みたいな感じで。これ、よく〈ロックに対して否定的なんですか?〉って言われるんですけどそうじゃなくて、〈じじいは少しもブレる事なく8ビート刻んでる〉んで。それぞれすごいという」
――〈こうですか?〉と問うている新参者も、それに頷くフリしてブレずに8ビートを刻んでいるじじいもすごいと。これは、ご自身がバンドを始めた時の感覚も含まれているんですか?
「僕、音楽始めた時は、ホントに音楽好きじゃなかったんで、そういう感覚はなくて。いま、僕が何年かバンドをやってきたなかでの、〈バンド始めた人ってこんな感じじゃない?〉っていう想像ですかね」
――音楽を始めたきっかけって、前のインタヴューの時は〈ベースの上をバービーに走らせたところから〉というお話だったと思うんですけど。
「そうですね」
――その時点で音楽に対する愛着はなかった?
「なかったですね。僕は文章を書いたり、映像を作ったりすることが好きだったんで。でもそれをやっちゃうと、なんかもう、僕、こうなっちゃうんで(一方向しか見られない、というジェスチャー)。ガッチガチになるな、っていうのがあったんですよ。なんか、好きすぎて逆につまらなくなりそうで。それに対して意見を言われることも、〈ふざけんな~!!〉みたいな」
――ああ、頑なになっちゃう感じが。
「うん」
――音楽だったらそういうこともなく?
「うん。好きじゃないし」
――(笑)いまはどうなんですか? 音楽、好きですか?
「聴くことはほとんどないですね。ガッツリ聴いたことがあるのは、ゆらゆら帝国とたまぐらいだし。でも対バンとか観て、〈あ、格好良いな〉って思うことはあります」
――ご自身で演奏したり、曲を作ったりすることはいかがですか?
「うーん、お題を出されるのが好きなんで。〈音楽というカテゴリで何か表現しなさい〉っていうお題がある、みたいな感じなんですよ」
――そのお題を延々と自分で自分に出し続けてる?
「そうですね」
――ちなみに、先ほど文章を書くのが好き、とおっしゃってましたが、ストーリーを作る時に参考にされている方とか、好きな方はいるんですか? ジャンル問わずで。
「僕はもう、中学校時代からずっとダウンタウンが好きで。ダウンタウンって、〈なんやこの設定?〉みたいなコントとかあるじゃないですか。そういうのが好きですね」
――それって、前のインタヴューでおっしゃっていた〈影響を受けているとしたら、落語とか童謡とかかもしれないです〉というお話にも通じる気がしますね。去年の10月のワンマン・ライヴでも落語家の方をオープニング・アクトに迎えてましたけど、あれって嘘つきバービーというバンドを伝えるのにすごく有効な手段じゃないかと思って。落語って、一見シュールというか、突拍子もないストーリーも普通にありますし。そこに意味を求めようとすると、逆にわかりにくくなってしまったり。
「うんうんうん」
――岩下さんの歌詞にもそういうところはありますよね。頭のなかに描いた妄想――〈絵そのもの〉をそのまま説明してるだけのものとか。
「うん。その時には漫才師を出そうか、っていう案もあったんですけど、漫才師だと〈笑う〉っていう前提でくるじゃないですか。でも落語って、笑わなくてもいいじゃないですか。もちろん〈笑わせる〉っていう要素もあるんですけど、そこがなんか……うちの歌詞は〈笑おう〉と思って聴かれるのはちょっと違うから、そういう部分も落語とは通じてるのかな、って思いますね。ホントに〈可笑しみ〉っていう言葉がピッタリだと思ってるんですけど」