LONG REVIEW――嘘つきバービー 『ニニニニ』
『ニニニニ』というタイトルに深い意味はないという。むしろ〈意味がない〉からこそいいのであり、あとは字面や発音のおもしろさを重視したのだろう。□□□みたいなもの、と言うとわかりやすいか。そして、その□□□は文字と言葉をテーマに据えた『CD』という作品を発表したばかりだが、嘘つきバービーも何より言葉を重視し、言葉の持つムードを音に変換することを目的としている。その基本路線は本作でもなんら変わりないが、なかには変化を感じさせる部分も。
〈少しでも動けば/ロックのパターンを越しちゃうかもしれない〉
〈元祖キモカワ〉とでも言うべき、シュールで、どこか悲哀も感じさせる世界観の描写を得意とする彼らにしては珍しく、主張の感じられる“音楽ずるり”のこの歌詞が、本作を象徴しているように思う。つまりは〈ロックが、音楽が、形式化しすぎてないか?〉〈表現はもっと自由でいいんじゃないか?〉と。
これまでの作品に比べると、1曲のなかでの展開は控えめで、フレーズの反復を中心とした〈引きの美学〉が感じられる作品であり、音楽的に洗練された作品であることは間違いない。それでもやはり、彼らの主目的はそこではなく、音楽というフォームを使って言葉をより自由に、よりイマジナティヴに表現することこそが目的であり、そのための音楽的洗練なのだろう。
よく言われる〈ポストゆら帝〉という評価に関しては、バンドのスタンスが大きく異なるので、基本的にあまり適しているとは思わない。ただ影響下にあることは事実であり、またシーンの異端児としてカウンターの機能を果たすという点においては、あながち間違いとも言い切れないと思うのだ。
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