インタビュー

LONG REVIEW――lynch. 『I BELIEVE IN ME』

 

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lynch.のサウンドが内包しているのは、ナイン・インチ・ネイルズやシステム・オブ・ア・ダウンを思わせる攻撃的な衝動と、LUNA SEAや吉川晃司にも通じるキャッチーな歌謡性。それらが混ざり合い、独自のマーブル模様を描き出すのが彼らのサウンドの特徴である。

この新作『I BELIEVE IN ME』はゴシックなピアノのインストで始まり、スクリーモの“UNTIL I DIE”へとスリリングに雪崩れ込む。他にも重心の低いリズムの連打に乗せて、葉月がクールに囁く“-273.15℃”や、淡々とした演奏にディレイやエコーを用いた虚ろな“THIS COMA”。スラッシュ・メタルやポスト・ハードコア調から、次の瞬間には(もしくは同時進行で)美しいコードを奏でるツイン・ギター、そして、艶やかな声を震わせたかと思えば、獣のように咆哮を上げる葉月のヴォーカルからも窺える二面性が、彼らの大きな魅力だと思う。

その二面性は、ロマンティックな表現のなかに終末感や不安、不穏な攻撃性をも織り込んだ歌詞においても見られ、曲調やビートに合わせて英語/日本語を使い分けることで、音の響きと意味性を両立。陰と陽、光と影、善と悪、男と女……サウンドとはまた違う、対立する事象をモチーフとしている。

その音楽的な影響をダイナミックにミックスする彼らの志向は、9mm Parabellum Bulletのハイブリッドなセンスにも通じていそうでおもしろい。メジャー・デビューを飾る本作、いわゆる〈V系シーン〉を越えて幅広い層に届くことを願う。

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年05月25日 18:01

更新: 2011年05月26日 14:03

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