インタビュー

INTERVIEW(2)——悶々としちゃうんです

 

悶々としちゃうんです

 

——いま、音楽がなくなったら?

「どうしよう!?……ってなっちゃう」

——あたふたしちゃう?

「あたふたするっていうか、詰まっちゃうって感じですね。何に吐き出して良いのかわからないし」

——じゃあ、音楽を身の回りのものに例えると?

「うーん……トイレ(笑)?」

——それはいろんなものを水に流してくれるってこと(笑)?

「あはは!」

——というか、溜まったものを排出できる場所っていうことか。

「うん。だって、トイレしなくなったら、人間どうします? 死んじゃうでしょ? だから、困るんです、ないと。悶々としちゃうの、曲を作れていないと」

 

作家に必要なのは根気強さ!

 

YUKALI_A3——ところで、これまで多くのアーティストに楽曲を提供してきましたが、作詞/作曲はいつ頃から始めたんですか?

「19のときですね。歌うだけじゃ物足りないっていうか、自分で書かないとダメって思って。高校を卒業してからはヴォイトレに通いながら、でもヴォイトレはそんなにせずに、その先生とオリジナルを作っていたんです。先生が簡単に作ったトラックで、私が作詞作曲をして歌を録る、みたいな」

——僕がYUKALIさんの名前を知ったのは、プロデューサーの今井了介さんの作品だったんですね。彼が手掛ける曲のコーラスを多くやってる女性、っていう認識が最初だったんです。

「そうでしたか。よくご存知で(笑)。でも、そこに辿り着くまでも結構長かったんです。いろいろな人のコーラスとか仮歌とかをやらせていただいたときに、たまたま今井さんと出会って、そこから(今井が主宰する)TINYVOICE PRODUCTIONといっしょにやることが多くなっていったんです」

——これまで多くのスタジオワークを重ねてきて、どんなことを学びました?

「スタジオワークではものすごいいろんなことを学びましたね。特に作家に必要なものっていうのをすごい学ばせてもらいました」

——その必要なものって?

「才能とセンスとスピードと、あとは根気強さですね」

——根気強さ?

「いろんな意味でとりあえずへこたれないっていう(笑)。クライアントさんから〈もっとああして、こうして〉って言われてもへこたれずに作ったり、あと曲を大量生産しなきゃならないから体力面でもへこたれない。いかに寝ないでいっぱい生むか、みたいな(笑)」

——知性のみならず、体力勝負なところもあると。

「それくらい大変なお仕事なんですよ、作家業って。でも、それと同時にいろんなアーティストさんをプロデュースしたり、いろんなレコード会社さんを見て、作家に必要なものとアーティストに必要なものはまったく違うなっていうふうにわかった。だから、TINYVOICE PRODUCTIONを辞めて、アーティスト業一本にしたんです。けど、作家業で得た経験とスキルがあるから、曲作りで締め切りに追い詰められても、やれる自信はあります。たぶん……(笑)」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年06月29日 18:00

インタヴュー・文/猪又 孝