インタビュー

MONICA URANGLASS 『PUXA』

 

MONICA URANGLASS_特集カバー

 

揺るぎない嗜好を根底に置きながらも、音楽シーンの〈いま〉を形成する最新の音にアンテナを張ることにも意識的。そんなトラックメイカーの68を擁することを鑑みれば、2009年の初作『The Temptation X』がUKのニューレイヴ~ロッキン・エレクトロ勢の流れを汲んだ作品となっていたのは当然のことなのかもしれない。

あれから2年4か月。MONICA URANGLASSが2枚目のフル・アルバム『PUXA』を完成させた。80sエレポップ風のキッチュなシンセ、ヒップホップ的なリズム・アンサンブルといった従来の特性に加え、本作においてもっとも著しい進化を遂げたのは、いわゆるベース・ミュージックに大きく接近したビートのヴァリエーションだ。リード曲として先行公開された“Calypso Flavor”をはじめ、バイリ・ファンキやボルティモア・ブレイクス、デジタル・ダンスホールなどの持つ(いい意味での)下世話な昂揚感と、生のバンド・サウンドが放つエッジを交配させたグローバルなダンス・ミュージックは、聴き手の理性を瞬時に崩壊させるほどのフィジカルな刺激に満ちている。

2000年代中盤頃からのクラブ・シーンの縮図を見るようでもある今回の新作について、サポートでドラムを務めるC.H.A.P.P.Yも含めた4人に話を訊いた。

 

賛否両論でやってます

 

――資料には〈賛否両論バンドと名乗っている〉ってありますけど……そうなんですか?

Kaz-tics(ギター、以下:リーダー)「なんか、口癖みたいに言ってたらいつの間にか浸透しちゃって、引くに引けなくなったんですよね。〈賛否両論〉っていう字面がカッコいいな、っていうのでつい言っちゃったっていう。あとは、ライヴ中に笑われたりしたんで。けっこう本気でやってたんですけど、〈あれ? なんかおもしろく映ってんのかな?〉って思ったから、じゃあ〈賛否両論でやってますよ、こちらサイドは〉って言っちゃおうって……あれ? (資料を読み上げる)〈リーダーのKaz-ticsが本気で肩パットを流行らせようとしてる〉……これ、賛否の〈否〉になってる(苦笑)」

――突っ込まないのも不自然かと思いますので……してるんですか? 肩パットを流行らせようと。

リーダー「流行っていただければ越したことはないですけど、これ(上掲の写真を参照。いちばん右がリーダー)、電車に乗ったら迷惑ですからね(笑)。作っていただいたんですけど、予想以上にデカくなっちゃって」

――引っ張る話か迷うところですが……何をめざしたんですか? この衣装は。

リーダー「なんでしょうね? 宇宙とかそういう感じ……でもないですね。ポップに仕上げようと思って。あとエナメルを着たかったっていうのがあるんですよね。まあ皆さんに笑っていただければいいんじゃないかっていう」

 

発端はゲットー・ビーツ

 

――でまあ、本題に入りますと、2年4か月ぶりとなるアルバム『PUXA』は、リズムがずいぶんトライバルに進化してますよね。前作『The Temptation X』以降のクラブ・シーンの流れを追っているようでもありますが、曲を作っている68さんはDJもやられてますよね? そういった視点が投影されているんでしょうか。

68(ヴォーカル/シンセサイザー/プログラミング)「世界中の音楽の流行をくまなく吸収はできないですけど……自分から見た音楽シーンみたいなものがちょっと穏やかだったりすると、あんまり曲を作る気にならないんですよね。自分のなかでおっきく盛り上がるムーヴメントがきたときに動きたい、っていうのがあるんです。それが今回はメジャー・レイザーとか、バイリ・ファンキとかボルティモア・ブレイクスとかの、ちょっと褐色っぽい音楽――ゲットー・サウンドみたいなものなんですけど、聴いたときはもう〈うわーっ!〉と思って。そういうのをおかずにしてメシ食う、みたいな感じじゃないと音楽を作れないっていうのは、DJとかやってるからなのかな?」

――メジャー・レイザーの初作『Guns Don't Kill People, Lazers Do』がリリースされたのは、2009年の6月とかですよね? アルバム単位で言えば、MONICA URANGLASSのファースト・アルバム『The Temptation X』が出てから3か月後ぐらい。

68「うん、うん」

――ボルティモア・ブレイクスや、あとクドゥルやデジタル・クンビアあたりがフィーチャーされたのもその前後かと思うんですが、そのへんの音が、ここ2年ぐらいの間の68さんにとってはもっとも刺激的だったと?

68「そうですね。まあ、前のアルバムのときからそうだったんですけど」

――ああ~、前作の冒頭曲“O・P・E・R・A・T・I・O・N”からして、そういうリズムですもんね。

68「うん、もともとオーガニックな音を打ち込みにしたようなものが好きで、軸にはあって。そういうところが時代の流れと比例していった部分はあります。そのなかで、いい意味でよそ見してるっていうか、例えばリーダーが教えてくれるようなニューウェイヴのサウンドだったり、あとGEORGE(ベース)が教えてくれるヒップホップだったりとかがエッセンスとして入ってきて、バンドの曲になってくんですけど。今回のアルバムは、ビートに関してはより深く突っ込んで作った感じですよね」

――前作はニューレイヴの流れにあるものとして語られることも多かったですけど、今作と前作との違いは、MONICAのサウンドを構成する要素のなかでどの部分を前面に出すか――その違いですかね?

68「そうですね。僕らがデビューした頃って、ニューレイヴとかおっきく括られてるなかでも、ボンジ・ド・ホレとか、そっちのほうの人たちもいたんですよ。CSSとかはちょっとロックっぽいけど……」

――はい。

68「なんか、サンシャイン・アンダーグラウンドみたいなちょっとアーバンな感じのものよりも、M.I.A.とかのほうが好きで、そういうものを採り入れたいと思ってたっていう。で、前はプラスαのエッセンスとして足されてたそういう部分が、いまはもう土台になっちゃったっていう感じじゃないですかね」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年07月27日 18:00

更新: 2011年07月27日 18:39

インタヴュー・文/土田真弓