INTERVIEW(3)――J-Popっていう土俵で勝負してる
J-Popっていう土俵で勝負してる
――ああ、そうなんですね。確かにその、いまお話に出たようなメロディーというか、歌に対する接し方はMONICA URANGLASSにも当てはまりますね。
68「そうですね。ただ、客観的な観られ方とか聴かれ方のイニシアチブというか、ウェイトみたいなのをどうするかっていうのはリーダーから教わってて。これは歌メロがすごくポップだとか、この音が前に出てるとか、そういうリーダーのフィルターを通した意見はすごい参考になってて、それを聞いたうえで、じゃあちょっと歌メロが弱いからもうちょっと強くするべきだな、とか、みんながシンガロングできるようなサビに持ってったほうがいいな、とか。そういうところはリーダーを軸に、(サポート・ドラムの)C.H.A.P.P.Yとかにも訊いたりして」
――バランスを取っていくと。
68「やっぱりJ-Popだから。J-Popっていう土俵で勝負してるから、うん。そういうところはありますよね」
――〈歌〉をフィーチャーした場合、リーダーさんから見た推し曲ってありますか?
リーダー「“Puxa Moon”ですかね。なんか、哀しいメロディーとか、切ないものがもともと好きで。“Puxa Moon”は哀しいだけじゃなくて盛り上がる要素もあって、歌メロがいいっすよね。歌いたいですよね、家に帰って」
――歌ってるんですか?
リーダー「密かに歌ってますね(笑)」
中近東っぽいギター
――家で歌ってる人と踊ってる人がいるわけですね、このバンドは(笑)。あとリーダーさんは、今作でエスニックなリフをかなり採り入れてますよね? 例えば“KINKY I.N.C”とか。
リーダー「そうですね。1曲目の“Danza Crowda”もそうなんですけど、よく中近東っていう言葉を口にしてましたね。アラビアとか、いろんなワードをみんなからもらって〈そんな感じのを〉っていう」
68「答えを言っちゃうとね、インドのハリウッドって何て言うんだっけ?」
GEORGE「ボリウッド」
68「ボリウッド。ああいう映画の音楽もすごい好きなんですよ、僕。シタールの音とかすごいカッコよくて、で、リーダーに何か弾いてもらうともともとそういうテイストが入ってて、〈なんか近くない?〉っていうところからスタートしたんです。こんな格好してるけど、鳴らしてるテイストってなんかエスニックだったり、ちょっとインドっぽい感じなんだよって教えたことがあって。そうなんだ、って言ってたんですけど、たぶん自分で聴いて、そうかもって思ったんでしょう。俺、こっちかな?っていう(笑)」
リーダー「俺、中近東かな~?って(笑)」
68「まあ、ある種の油田的な部分が吹き出した感じだったんでしょうね。今回のアルバムでは」
――(笑)一応言い換えますと、リーダーさんのなかに眠っていた中近東的なテイストが、本作ではギター・フレーズとなって噴出したと。
68「そうですね。リーダーをひとつの国と考えたときの資源とか鉱物ですよね、その中近東っぽさは。でもギター・パートに関しては、俺と半々で作ったんですけどね(笑)」
リーダー「ウチの油田、途中で涸れちゃったんで。意外と埋蔵されてなかったんですよね。2リッターぐらいしかなくて、だから2曲ぐらいで(笑)」
――(笑)その貴重な2リッターは、どの2曲に注がれてるんですか?
68「“KINKY I.N.C”ですね。この曲のリフをリーダーが作ったときに、これで5曲ぐらい引っ張れると思いました。それを軸にいろんなアイデアがもう、俺のなかからも出てきたんで。やっぱり最初の取っ掛かりが生まれないんですよ、ギタリストじゃないから」
――あとの1曲は?
68「あとは“My Menado”とか。ちょっと毛色が違いますけど」
GEORGE「“Danza Crowda”とかもけっこうラクダ感っていうか、遊牧民感が出てるよね」
リーダー「ありがてえ(笑)」
68「ああいう〈カッコいい!〉っていうギター・フレーズが出来ちゃうと、俺、いっぱい乗っけちゃう癖があるんで、そういう音数が多い曲とかは、すっごいテンションが上がってる。それをおかずにメシ5杯はイケる。メシ5杯を2合炊きで……だから結局2合しか食べてないんだけど(一同笑)。あと“My Menado”はリーダーの好きな感じ、ツボを考えて作った曲で」
――リーダーさんのツボって?
68「うーん……オシャレな歌詞とか。アルバムのときって、必ずGEORGEと1曲、リーダーと1曲、課題曲みたいな感じでガッツリ2人っきりで作るんですよ。要は……うーん……その人が満足する曲を作るっていうテーマで。前は“Termination X”がリーダーと作った曲で、今回は“My Menado”。GEORGEと作ったのは“Mellow Yellow”なんですけど。それで、リーダーとの曲はオシャレな感じにしなきゃいけないんです。できてないんですけど」
――その、オシャレな感じとは?
68「リーダーはBOOWYとか好きなんで。いわゆるその、〈カッコいい=ヤンキー〉みたいな。ちょっと田舎の、独特のそういう文化、あるじゃないですか」
リーダー「ソアラに乗って、爆音で“B・BLUE”を鳴らしてる感じ(一同笑)?」
68「(笑)でも、そのカッコよさと滑稽さみたいなのをよく知ってるから、そういうとこが好きなんですけど」
――ギリギリの感じ?
68「うん、ギリな……でも、そういうのがうまく出せなくて。ちょっと疾走感があって、オシャレな感じを出したかった。これは出来上がりが予想と全然違ってて、個人的に。歌メロを歌い直したり、案がいっぱいあったりで苦戦したんですけど、でもリーダーがいいって言ってくれたんでよかったです。この曲は、C.H.A.P.P.Yにもガッツリ叩いてもらって」
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