インタビュー

スネオヘアー 『スネオヘアー』

 

スネオヘアー_特集カヴァー

 

[ interview ]

じわりと心に染みる自然体のポップソングが、ここにある。スネオヘアーから届いた3年ぶりのオリジナル・アルバムは、7枚目にしてついにみずからの名前をタイトルに冠した一枚。アコースティック・ギターのウォームな響きが心地良いサウンドに、飾らない言葉、ふと口ずさみたくなるような優しいメロディーと、穏やかながら深みを感じさせる楽曲が揃っている。

前作『バースデー』以降の3年間で、さまざまな環境の変化を体験した彼。レーベルを移籍し、マネジメントも離れ、ミュージシャンとしてゼロからの再スタートを迫られる経験もあった。映画「アブラクサスの祭」に僧侶の役として初主演を果たしたこともあった。そして今年6月には、映画での共演から交際がスタートしたともさかりえとの結婚も発表された。アルバムには、そんな季節を経たスネオヘアー=渡辺健二の〈いま〉がドキュメントのように記録されている。

疾走感あるパーカッションが印象的な“期待ハズレの空模様”、聴いていて思わずニンマリする幸せな夫婦デュエット“家庭に入ろう”、“団欒”“シャボン”などのナチュラルなポップ・チューン、胸を打つバラード“さらり”に、土の匂いがするラストのスロウ・ナンバー“いいでしょ”。幸福感も生活の重みもリアルに込められている、かつてない円熟味ある手触りを持つアルバムだ。新作の背景にあった思いはどんなものだったのだろうか。

 

いろいろな感情が自然に出ている

 

――まずはアルバムが完成した時の手応えから話を訊かせてもらえますでしょうか。

「ああ、嬉しいなという感じでしたね。アルバムをまた出せるということ自体、本当に嬉しかった。キングレコードさんに声をかけてもらって始まったこのプロジェクトで、アルバムまで出せるって思ってなかったんで。こうやって形になると嬉しいですね」

――昨年は『逆様ブリッジ』『赤いコート』の2枚のミニ・アルバムを出してますよね。その時点ではフル・アルバムを出すというところまで決まってなかったんですか?

「お話はいただいてたんですよ。〈いやあ、ぜひアルバムも出しましょうよ〉って。でも、わかんないですもんね、こういう時代なんで(笑)。自分としても、年齢的なところもあり、環境の変化もあり、とにかく新しいアルバムの形で発信できるのは、すごく嬉しいことですね。サウンドとしても、自分が新鮮に感じているものを、合宿に行って集中して出来たものだし。作品としても充実してると思います」

――アルバムはどんなふうに作っていったんでしょうか? これまでも、シンガー・ソングライターとして、ある種のドキュメントとしての音楽を作られてきたと思うんですが、今回の作品には自分のどんな感情が表れていると思いますか?

「一つの感情に偏るということはあんまりないですね。でも、これまであったものをより自然に出せていると思います。いろいろな感情が、自然に出ていますね。影の部分と光の部分を照らし合わせているところは前と変わっていないんですけども。それぞれの嬉しい感情、悲しい感情が、そのまま出ている。生きていれば、何かしらの悲しみを背負ってしまうこともあるし。それを踏まえたうえで暮らしているということもあって。あと、向き合うところとしては、震災もあって、あんまり馬鹿みたいなこともできないなということも思ったし。でも、地震のこととも関係なく、そういう時代だと思うんですよ。変わらない、恒久的なものは、もうないんだなって思う。あたりまえのものがあたりまえじゃなくなる。それはすべてに言えると思いますね」

 

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掲載: 2011年08月24日 18:00

更新: 2011年08月25日 04:56

インタヴュー・文/柴 那典