インタビュー

INTERVIEW(4)――正直な音楽をやりたい

 

正直な音楽をやりたい

 

スネオヘアー_サブA3

――この次の曲が“団欒”で、その次が“シャボン”。あきらかに生活の音楽だなあと思うんです。

「夕暮れとか、知らない街に灯りが点在して、そこで夜ご飯の準備をしているような感じがしますよね。生活というイメージは大きいですね。自分にも暮らしと営みがあって。それは何ともない、あたりまえのことかもしれないですけど、それ自体を新鮮に感じているのかもしれないですね。いま、音楽をやると言えば、そういうところに寄り添うものが出てくるのかもしれないです」

――で、そういう曲が並んでいるからこそ、11曲目に置かれた“さらり”が、大きな意味合いを持っていると思います。これは前のミニ・アルバム『逆様ブリッジ』に入っていた曲ですけれども、去年といまとで響き方も違う印象になっていて。

「そうですね。もともとワンルームから始まって、その狭い窓から見てる東京の空とか、独り言のように言っている狭い世界のものなんですけれど。それも、別の感情を持っている人、別の暮らし、別の環境のなかにいる人にも広くリンクしてくるところがあるんじゃないかと思っていて。やっぱり、同じところで暮らしている、同じ時代に暮らしているので、いろんな感じ方をしてくれるんじゃないかと思います。それに、この曲、原発を感じたりしますよね」

――そうなんですよね。震災以降のリアリティーというものに、この曲がすごく響く感じがします。

「そうなんですよね。何もかもわからない時代になっちゃったんだ、という」

――震災と原発の事故があって、あたりまえだと思っていたことがあたりまえじゃなかったという感覚は広く共有されていると思うんです。そこでまずどういうことを思いました?

「僕は、困ったなって思いましたね。大人はいいんですよ。〈またこれか〉みたいな感じで。たとえば、子供の時にうさぎ跳びさせられたり、いろいろ着色料が入ったものを美味いって食ってた世代なんで。教科書で習ってきたことも、いまの子供の教科書を見ると全然違っていたりして。〈あのことは、間違ってました〉っていう。〈またこれか〉って感じなんですよ。でも、子供にとっては可哀想だなって思う。こんなにいい加減で、こんなに確固としたものがないと思える時代で、どうやって生きていくのかなって。そういうことを考えます」

――そうですね。本当に。

「でもまあ、自分としては、できることをやるしかないですね。だから、まずは明るく生きるという。前みたいにネガティヴな感情を吐き出すような、ぶつけるようなものにリアリティーを感じなくなった。暮らしとか、営みのなかにある、小さなもの。子供たちが学校に行くのを見送って、洗濯して、掃除して。そういう〈暮らし〉がリアルだし、そのなかにいろんなものがあるなと思って。そういうところから、全体の方向性も生まれているのかもしれないです」

――だからこそ、アルバムはエヴァーグリーンなものとして出来上がっているんだけれど、同時に時代性もあるという感じがしました。

「そういう時代に暮らしていますからね。考えざるを得ないです。本当に、アルバムって、後で振り返って聴いた時に、その時の自分がよくわかるようなものなんです。正直な音楽をやりたいと思っていますからね」

 

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掲載: 2011年08月24日 18:00

更新: 2011年08月25日 04:56

インタヴュー・文/柴 那典