INTERVIEW(3)――暮らしに近い感じの肌触り
暮らしに近い感じの肌触り
――合宿で作ったと言ってましたけれど、制作期間としてはどれくらいでした?
「合宿も、楽しんでやらせてもらっただけで。数日間で書き上げる!みたいな感じは全然なかったですね。デモの段階でアレンジも出来ていたから。ただ、実際に音を出すというのは、とても大事な工程でしたね。実際、レコーディングはベースとドラムと3人でずっとやったんですけれど、その空気感も大事でした」
――アルバム曲は、生っぽい感触がありますよね。音の感じも作り込んだものではなく、ゆったりとしたバンド感があります。そのあたりのサウンドはどういう意識から生まれてきたものでしょう?
「このアルバムの曲は、これまで出してきた曲のようなダビングの仕方って全然してないんですよね。たとえば“赤いコート”なんかは、ほとんどパーカッションの領域でアレンジしていく感じで。それがすごく新鮮だったんですよ。そういう人力感がおもしろいと思ったところの延長から入っていきました」
――1曲目の“期待ハズレの空模様”もパーカッションが活きている曲ですね。
「まさにそうですね。昔だったらハーモニーをいれたり、鍵盤を入れたり、そういうことをしそうなんですけど、全然しなくて。わりと薄めな音で、パーカッションだけがある。エレキ・ギターもほとんど弾いてないですし。いっしょにやってる3人で、まず〈音を出して楽しい〉ということを共有したいというのがあったんです。そこから、音を出したりご飯を食べたりしながら、全体のイメージを詰めていった。音楽的な時間から共通言語が生まれて、アレンジが進んでいったという。そういう意味でもすごく大事な合宿でした」
――アメリカのオルタナ・カントリーに近いような音の触感もありますよね。
「ああ、そうかもしれないですね。サウンドのイメージとして、〈木〉のイメージはありました。そういうものを新鮮に感じていたという」
――5曲目の“家庭に入ろう”は、どんなふうに出来た曲なんでしょうか?
「これは、〈家庭に入ろう〉という言葉にフシをつけて、奥さんといっしょにCMソングを鼻歌で歌うみたいにして、ずっと言ってたんですね。それを曲にしようと思って。合宿の時に3人でイメージして合わせてみたら、すごく良いので。ここにも木の感じがあって。オルガンとかピアノも入ってますけど、熱くなって叫ぶみたいなモードじゃなかったんですよね。あったかい、いい方向の気持ちというか。でも、叫ばずとも、音が歪んでなくても、電気を通してなくても、熱い感じがあるなって思って。で、〈家庭に入ろう〉というメロディーだけが最初にあって、あとは適当に歌って作っていった感じです。歌詞も、せっかくだからもうちょっと書こうって、(奥さんと)2人でちょっとずつ出しあって。そしたら“3年目の浮気”みたいになりましたけど(笑)。こういう馬鹿っぽい曲は全開でやり切るのが楽しいねって、進めていった曲ですね」
――この曲はいいですよね。これも込みで嘘がないなあ、と思います。ここを隠したり、気取ったりしないんだなっていう。
「大人になったな、って感じはしますね。大人になると、より子供みたいなことをすんなりできるというか(笑)。おもしろいですよね」
――それに、すごくアットホームな感じと、暮らしに近い感じがあります。
「そうですね。暮らしに近い感じというのは、サウンドの肌触りにもあるのかもしれない。この曲はもろにそうですけれど、他の曲でもありますね」