INTERVIEW(3)――絶妙なポンコツ具合
絶妙なポンコツ具合
――ちなみに、誠さん(武井誠、ドラムス)はどうなんですか?
「誠さんは、下手なわけじゃないんですけどデモありき、ガイドありきと言いますか……」
――となると、研次郎さんとは逆で、コピーに近いプレイという?
「俺の曲は特にそうですね。コピーしたところから、そこまでコピーしなくていいよ、って言いながら変えてく、みたいな。怠けて生きてたからそうなったんです(笑)。いまはちょっと高めの壁にブチ当たってるところですよ(笑)」
――では、ギタリストとしての青さんはいかがですか?
「青さんはすごいですよ。天才肌なんじゃないですか? ……違うか(笑)。でも、やっぱりギタリストですよ。特にレコーディングなんかだと徹底して るし、あとは、自分ができることとできないことを知ってる。できないことってね、世間で思われてるほどなくて。意外と器用で、いろんなプレイができるんで すよ、実は」
――〈世間で思われてるほど〉って(笑)。
「(笑)cali≠gariはベースが上手くて、他がポンコツで、っていうイメージですよ。だけど青さんのポンコツ具合っていうのもね、デコボコな んですよ。だから、ある意味ではギターがすごく〈うまい〉と思うんですよね。〈上手い〉じゃなくで。独特な感性があるから、和音なんかも、ものす ごいグッチャグチャの、とんでもないもの弾いたりするんだけど(笑)、〈それ、格好良いね〉みたいなのよくあるし。普通に、いわゆるカッティングとかもす げえキレがあるし。なにしろすごいなーと思うのは、リズムがめちゃめちゃ良いんですよね。楽曲をヴォーカルで捉えてるから、歌に近いリズム感を持ってるん ですよ、ギターで。あと、青さんでよくあるのは、レコーディングのときにちょっと(録音を)廻しながら練習してて、それでいいじゃん、ってなるパターン。 昔はね、疲れると〈もうやりたくない〉みたいな感じだったけど、いまはすごい徹底してるから(笑)、だいぶやりますね、って感じで」
――納得するまで、延々と?
「そこもまた変わってるところで、自分が納得するまでじゃなくて、録ってる人とか、周りで見てる人を納得させるまではやめない。自分で決めないっていうかね。〈僕はどっちでもいい。あとは石井さんの好きなようにして〉とか、そういう感じですよ」
――今回のシングルには、そういった各メンバーのプレイヤー的な個性も入ってる。
「そうですね。うん」
アンバランスな格好良さ
――そして青さんが手掛けた“東京、43時00分59秒”ですが、このジャケはもう、90年代のトレンディー・ドラマ的な。
「ふざけてるんですけどね。そういうところがおもしろいですよね(笑)」
――パロディーか、っていうぐらいにモロですよね。楽曲もアーバンなAOR歌謡と言いますか。
「まあAORですよね」
――こうきたか、っていう。で、詞に関しては、青さんのパーソナリティーが深く刻み込まれてる歌じゃないかと思うんですね。
「でしょうね」
――それを別人である石井さんが歌うっていうのは、どういう感覚なんですか?
「そこはやっぱり時間がかかるというかね、ライヴなんかだと、その切り替えみたいなのができないというか。例えば〈ウギャー!〉って言ってたあと に、いきなりこういう曲を演奏しなきゃならなかったりするわけですよ。楽器だったらまだいいけど、ヴォーカルはホントにきついんですよね。だから若い頃と かは、ライヴ1本通していまいち納得できないっていうか、ここまでは良かったんだけど……みたいな、そういうこともあったんだけど、いまはもう、何もかも をいいほうに持っていけるっていうか。ライヴだとね、俺なんか、普通のヴィジュアル系の人よりも少し風体がおかしいわけじゃないですか」
――おかしいですね。
「そのね、少し風体のおかしい人がこういう曲を歌ってるっていうのはもう、このうえないおかしさじゃないですか。それを恥ずかしそうに歌ってたら格好悪いけど、真面目にやってますからね。そういう感覚が格好良いって思えるようになってきたというか。もともとアンバランスな感じっていうのは、狙って やってるところもあったんですよね。冷静になったら、異様な光景じゃないですか」
――まあ、風体のおかしな方が、AOR的な楽曲を切々と歌い上げてるわけですからね。
「そうですよ。〈東京は黄昏れて〉って言ってるわけですよ」
――黄昏のビル街の映像をバックにしてね。
「そうそう。それがもしかしたらいちばん格好良いんじゃないかな、って。どっちかっていうと俺は、“娑婆乱打”っていう格好してるじゃないですか(笑)」
――(笑)そういうアンバランスなところに魅力を感じるんですか? 石井さんは。
「俺以外の人もみんなそうですよ。cali≠gariの人たちはみんなそうですね」
――ちなみに“東京、43時00分59秒”を歌うときって、詞の世界に入り込むとか、そういう感覚はあるんですか?
「まったくないですよ。何かの世界に入り込めるような人間ではないので、歌として歌いますよ。詞の世界なんてね、まあ、わかんなくていいっていう か、そこを理解しようとするほうが愚かっていうか。だって俺が作ったものじゃないし。だから自分の解釈で歌って、そうすると〈そこはそうじゃない〉っ て……青さん、すっげえヴォーカルに厳しいんですよ。楽器のこととかはどうでもいいくせに。だからいろいろ言ってくるんだけど、何を言われてもね、何度で もやり直すんですよ。〈はいはいはい〉って」
――では、ヴォーカルについては青さんの完璧なディレクションがあるわけですね。
「ディレクションっていうとまた違うんですけど、ニュアンスとかそういうことかな? 基本的には好きなようにやってくださいね、ってことなんですけど、ただ解釈の違いとかってあるじゃないですか。それが良いときもあって、あんまり良くないときもあるっていう」
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