インタビュー

cali≠gari 『# 娑婆乱打編』『# 東京、43時00分59秒編』

 

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ここにきてLA' ROYQUE DE ZAVY(各自調査)の復活(?)も報じられるなど、cali≠gari周辺がどんどん賑やかになってきている。継続した活動が見込まれるのか不透明なままの彼らだったが、どうやら今後はそれぞれのプロジェクトを動かしながら、タイミングを図ってcali≠gariも動かす、というスタイルにスイッチしていくようだ。

そんなわけで、2011年6月、日比谷野外音楽堂で開催された2デイズ・ライヴを経て発表された約1年5か月ぶりの新作は、メイン・ソングライターである石井秀仁と桜井青のペンによる2種類のリード曲をそれぞれ表題に冠し、個別のカップリングを配した3曲入り、2形態のシングル『# 娑婆乱打編』『# 東京、43時00分59秒編』である。

まず石井製の“娑婆乱打”は、軽やかさを演出する跳ねたストリングスや、石井と桜井によるヴォーカルの掛け合い、重声で繰り出される決め文句〈ウーハー〉をはじめ、エラくキャッチーなフックが満載のポップ・チューン。上述のステージでも2日間に渡ってプレイされたが、完全に初披露だった初日と、連続参加のオーディエンスも多かったであろう2日目とでは客席の反応に格段の差があったことから(それこそ、石井もMCで触れずにはいられないぐらいに)、〈ライヴを意識した〉という楽曲の意図が叶ったことはすでに証明されている。また、展開が異様にスムースであることも隠れた特徴で、煙に巻くようにストンとエンディングを迎える構成には、ふたたび冒頭へ――というさり気ない中毒性も。

そしてカップリングは、ブリンブリンにも程があるチョッパー・ベースが全編に敷かれたパワフルなファンク・ロック・ナンバー“トイトイトイ”。問答無用で腰を刺激するダンサブルなグルーヴと、意味のすり替えを繰り返しながらド派手に撒き散らされる〈トイ〉というキーワードが聴き手をグイグイと扇動するが、そのぶんラスト間際で訪れるサビの切なさが、胸を締め付けるようなカタルシスとなって押し寄せてくる。

一方、桜井による“東京、43時00分59秒”は、アーリー90sの匂いを纏ったAOR歌謡。前作『≠』の“クロニックダンス”などに潜ませたアーバンな80s路線をさらにアダルトに更新した内容だ。夕闇に染められていくビル街を背景に、過去への追憶と現在の喪失感を丁寧に描き切る石井の歌唱と、控え目に転がるエレピがたまらない哀愁を浮かび上がらせる。その、都市に対するどこか荒涼とした視点がなんとも桜井らしいシティー・ポップだ。

こちらのカップリングは、危うすぎるバランスの上でなぜか成り立っているバンド・アンサンブルと、人間関係のしがらみを〈関係ないから!〉とシニカルに蹴散らす歌詞がやたらと痛快な“すべてが狂ってる~あんまり狂ってない編~”。悪意も批評性もユーモアを通過させることでエンターテイメントに還元する――そんなcali≠gariというバンドの十八番をわかりやすく体現している楽曲と言えるだろう。

確信犯的なイビツさをもってポピュラリティーに挑んだ全4曲。どれも突出した方向性ながら、まぎれもなく彼らである、という点が恐ろしいところだ。

 

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掲載: 2011年08月24日 18:01

更新: 2011年08月26日 15:35

文/土田真弓