インタビュー

INTERVIEW(3)――言いたいことを完結させる言葉



言いたいことを完結させる言葉



伊集院幸希_A2

──なるほど。最初は英語で歌詞を書いていたそうですが、日本語の歌詞を最初に書いたときは難しかったですか?

「ほんと何も考えずにメロディーに言葉をのせてたから、難しいとは感じなかったです」

──ああ、なるほど。伊集院さんの歌詞は〈文学性〉というよりは〈フィーリング〉というか、ソウルの歌詞を翻訳したような不思議な味わいもありますね。曲にならずにボツになるものもありますか?

「いえ、だいたい曲にはなりますね」

──いまオリジナル曲はどれくらいあります?

「20曲くらいです」

──じゃあこの『あたしの魂』の5曲は、なかでも伊集院さんらしさが表現されたものとして考えていいんですね。

「そうですね」

──サブタイトルというか、〈gimme back my soul〉と英題が付けられてます。『あたしの魂』だったら〈my soul〉でもよさそうなものですが、すごく意思を感じました。

「これは1曲目の“WHERE IS THE LOVE”に関係しているんです。これが私をいちばん表している曲だと思っていて、このなかに〈あたしの心の中に/帰ってmy soul〉という歌詞があるんです。このアルバムが完成したとき、もちろん自分の言いたいことはこのなかで全部言っているんですが、まだ完結されていない感じがして。それを完結させるのがこの言葉じゃないかなと思って」

──なるほど。曲のアレンジはどうしたんですか?

「私は説明するのが下手なので、たとえばCDを聴いてもらったりして〈こういう感じにしてください〉って大まかなことを言ったり、こういう雰囲気でドラムはこんな感じで……ということを書いたりしました」

──曲を書いた時点で伊集院さんなりの音像があって、ぞれを再現してもらう作業だったわけですね?

「でも本当に説明するのがヘタクソなので……困られていたと思います(笑)」

──現場でミュージシャンの皆さんから何か言われたことはありますか?

「歌がいいですねって言われたのがすごく嬉しかったです」


たぶん、音楽だけ



──ところで作曲はなんの楽器を使いますか?

「曲はギターで作ってます」

──伊集院さんのバックボーンのひとつにはキャロル・キングの音楽があると思うんですが、彼女に影響を受けると……。

「普通はピアノですよね。ステージでキャロル・キングをカヴァーするときもギターで演ってます」

──うわ聴きたいそれ! ちなみにギターはいつから?

「20歳くらいで習って、そのときはすぐにやめたんですけど。それは単純に、ピアノよりギターの方がやりやすかったので(笑)。なにか楽器をやりたいって思ったときに、まずギターが浮かびました。習いはじめてすぐくらいに、ライヴでちょっとやってみて失敗をしたんで、それからしばらく人前でギターを弾くのはやめちゃったんです」

──いや普通は〈できる!〉と思えるまで練習してから人前で披露すると思うんですが……(笑)、これまでお話を伺って思ったんですが、伊集院さんはなんだかんだで大胆ですよね。

「いえ、すごく臆病なんですけど……」

──そもそもマライアに衝撃受けた中学生がまず〈デモテープをレコード会社に送る〉ということはしないと思うんですよ。

「たぶん、音楽だけって思ってたんです。友達もあまりいなかったかな」

──じゃあ本当の意味で救われたんですね、音楽に。

「ええ、良かったです」

──こんなこと言うのもなんですが、神様は伊集院さんに社交性を与えなかったかわりに、音楽の才能を与えたんですよ。

「えー! ……社交性のほうがラクだったかもしれないです(笑)」

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年10月05日 18:02

更新: 2011年10月05日 18:02

インタヴュー・文/フミヤマウチ