インタビュー

INTERVIEW(2)――絶対的に強い楽曲



絶対的に強い楽曲



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――ええと、まだ喋ってない人は……。


牧瀬崇之(ベース)「はい。僕がいちばん印象に残っているのは、6月ぐらいに帝国ホテルであった、美空ひばりさんの23回忌法要のイヴェントですね。ひばりさんが歌っている映像に合わせて“真赤な太陽”という曲を演奏したんですけど、列席者の方々が小林幸子さんとか、大御所の方ばかりで。〈HIBARI 7 DAYS〉のときは、他の歌手の方のバックがほとんどだったので、それを経て、ひばりさんと自分たちだけで演奏できたことが嬉しくて。〈HIBARI 7 DAYS〉からの成長を個人的にすごく感じて、あの夜は想い出深かったです」


――そうやって、美空ひばりさんの楽曲を演奏したこともそうですし、〈情熱大陸〉もそうですけど、演歌や歌謡曲やポップスや、いろんな方といっしょにやることで、自分たちの音楽性にも変化があったんじゃないですか?


園田「そうですね。さっきお話した、外国に行って自分は日本人だと自覚したのと同じように、〈HIBARI 7 DAYS〉でヴォーカルといっしょにやったというのはすごく大きかったと思います。歌の方といっしょにやると、自分らはインスト・バンドなんだということを、改めて気付かされるんですよね。そこで共演した方々は、楽器として声を使われる超一流の方ばかりで、そういう方たちに張り合おうとした時に、絶対的に強い楽曲を書かないといけないという気持ちはありましたね。ロック・バンドで素晴しいシンガーがいたら、最初のシャウトで観客の心を掴んでしまうとか、あるじゃないですか。そういう圧倒的な歌の力というものに対抗するためには、何よりも楽曲としての強度があって、深みも持っていないといけないというのが、今回の作品を作るにあたって作曲者の意識としてはありましたね」


――今回の『疾走(はしれ はしれ)』は、まさにそういう作品ですよね。メロディーがグッと前面に出ているし、ロック・バンド的な空気も感じられて、これまでとはあきらかに違うと思います。


園田「そうですね。やっぱり、こういう編成のバンドがあまりいないので、参考にできるものがないんですよ。インストが全盛期を迎えたのは70~80年代のジャズ/フュージョン・ブームだったりすると思うんですけど、それはその時代に一応の完成形を見てますんで、僕らがいまめざす意味はあまりないと思うんですよ。そう考えたときに、メンバー全員共通して歌モノが好きだし、ロックが好きだしというものもあって、今回のアルバムに関して言えば、インストということをまったく意識せずに曲を書いたんですよね」


――ああ、なるほど。


園田「普通にロックやポップス、歌の入ってるものをイメージして書いてきたし、実際この1年ぐらい、僕は日本のロックばっかり聴いてたんですよ。前作の『ルネサンス』には、タンゴっぽい曲やラテンっぽい曲がありましたけど、そういうのはインストですごくやりやすいんですよね。タンゴやラテン、ジャズをやる場合には、歌がいないことが自然ですし、そういうフォーマットのうえで曲を書くことは実はすごく簡単なんですね。で、今回のアルバムはたぶん、サウンド的にはもっとシンプルになってるとは思うんですけど、曲を書く人間としてはものすごく難しかった。本当に、書いたあとに魂が抜ける感じというのがすごかったです、今回は」



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掲載: 2011年11月09日 18:01

更新: 2011年11月09日 18:01

インタヴュー・文/宮本英夫