INTERVIEW(2)――フットワークの軽いオタク
フットワークの軽いオタク
――新作ではRufusの上田修平さんと制作をされてますが、初期はお一人で作られていた?
「その当時は橋本(竜樹)君という人がいて。前作の『The Island Of Curiosity』からが上田君。曲の作り方としては以前から変わらないですね。僕は楽器を弾けないんです、コードとかもよくわかってないので。それで、レコードを参考書がわりに20枚とか30枚とか持って行って。このレコードのコードで、ブラスをこのレコードの感じで入れてほしい、みたいにパッチワーク的な感じで作っていく。初期の曲とかは、メガミックスじゃないですけど、ボコボコ変わっていくような展開があって。それは制作がいびつな感じだったので、そういうところが出ていたという。それをもうちょっとやっていくうちに、曲がストーリー的になっていった感じです」
――それこそセカンド・アルバム『SIDE FARMERS』、その次の『The Island Of Curiosity』になってくると、サンプリング・ベースで作っているんだけど、シンガーソングライター的な要素をとても感じる、みたいなおもしろさが出てきますね。
「そうですね。最初はサンプリングのワンループでヒップホップ的に作っていくのが楽しいな、っていうところから作っていたんですけど。やっているうちに、よりポップスとしてクォリティーの高いものを作ろうという結果でこうなって」
――これまで、シングルではなくアルバムというフォーマットで発表してきている理由は?
「単純に言えば、誰もやっていないなと。海外のアーティストで12インチ1枚で出していくアーティストは多いんですけど、アルバムとしてパッケージングしているアーティストってそんなにいないじゃないですか。それが結構おもしろいというか。そういうのがあるといいなと。海外のアーティストの1曲入魂感より、11曲アルバムで聴いて〈なんとなく伝わる〉ほうがいいかなって感じがあります(笑)」
――アヴァランチーズのような、コラージュで音楽を作る人が2000年前後から脈々と出てきていますが、ご自身としてはそういった面々に近いスタンスでいる?
「まあ、そこらへんもみんな好きなんですけど、ちょっと頭でっかちなクロスオーヴァー寄りであったりとか、ジャズ寄りであったりとか、そういうアーティストはたくさんいると思うんです。でも、デ・ラ・ソウルのファースト・アルバム『3 Feet High And Rising』みたいな、ちょっとおちゃらけた感じのポップ・ミュージックになっている、というのがなかなかいない。だから、(HALFBYとしては)そういうのを楽しんでやっているという感じですね」
――レコードショップのバイヤーやDJの方々は、ある意味、音楽ジャンルの旬や潮の満ち引きに対してすごく鼻が利くようになると思うのですが、そういう意味でも正面から流行っているものをやるのは抵抗がある?
「そうですね、自分の音楽をそこまで完成度が高いとは思っていないので。アイデアが先行する音楽というか。例えばすごく良いソウルの曲があったとしても、それを自分でやろうとは思わない。ソウルだけれどもビートが変で、みたいなところに魅かれるところはあります」
――先程の黒い白いの話にしても、ゴリゴリの黒いビートを突き詰める、みたいな志向はあまりなく?
「そうです。いい加減なところを通りたいというのはあります(笑)。ひねくれている感じというか」
――ハウスにしてもテクノにしてもヒップホップにしても、時代の変遷と共にだんだんマッチョになっていったり、よりダークだったりドラッギーになっていったりという側面もありますが、高橋さんとしては、そういう流れとは一線を画す感じはありますね。
「そうならないのが、逆に躁だっていう(笑)。(レーベルメイトも含めて)オタクなんですけど、ストイックに掘り下げるというよりはフットワークが軽い感じですね」