インタビュー

Salyu 『photogenic』

Salyu-midashi

彼女の新プロジェクト<salyu×salyu>と並行して製作された本作には、小林武史が書き下ろした作品が
並び(1曲のみ桜井和寿作)、Salyuのヴォーカルが、これまでにない幅と奥行きで響いている。
そしてすべてを聴き終えた時、前向きになれてる自分に気づくだろう。
でもこれは、今の時代に音楽が与えられる最大のことかもしれない。

「音楽って誰かに喜んでもらうためにあるんだなぁって実感したし、ポップがどう在るべきかも考えた」

3/11以前と以後……。そんな表現をいたるところで目にする。

音楽の世界も例外ではない。

ア-ティスト達は、音楽をやることの意義を足元から見つめ直し、

新たな活動へと動きだしている。

「それまでの私はつい会話の中で、<弱い人はさぁ~>なんて言葉も使ってた。

でも震災以降、強い人なんて居ないってことが分かった。みんな弱い。

でも、そこから<どう強くあろうとするのか>が人間らしさなんだって分かった。

だから歌うにしても、必要とする言葉がガラッと変わってしまったんです。

ただ……、だからこそ音楽は、誰かに喜んでもらうためにあるんだなぁってこと、

実感する機会にもなったんですね。ポップがどう在るべきかってことも、

今回のアルバムを作りながら、全員で考えていたことでした」

 そんな中、彼女の育ての親である小林武史が、アルバム作りの指針として提案したのは、

こんなことだったという。

「<チ-ムは小さくてもいいから、一瞬一瞬に作り手も実感のあることをやっていこう>。

<音楽の喜びに満ちた真心のあるものを作っていこうよ>。小林さんはそう言ってました。

そして『photogenic』というタイトルも、小林さんから提案された言葉です。

でも言われた瞬間、すっごく納得がいった。

ポップ・ミュ-ジックってことにもピッタリだなって……。

そもそも音楽は時間の凝縮だし、ポップって、短い時間に一瞬の輝きを込めて、

それをどれだけ伝えられるかだろうし、『photogenic』、つまり<写真うつりがいい>というのも、

一瞬の笑顔が魅力的だったりということの結果なんですよね。

だからこのふたつは、すごく繋がると思ったんです」

 アルバムの全10曲のうち、桜井和寿作の“青空”以外、すべて小林武史の書き下ろしである。

イントロからワクワクする、そんな疾走感に満ちた“camera”、快活なホ-ンが響く新境地の“LIFE(ライフ)”、

明日は必ず来ると信じられる“悲しみを越えていく色”、先行シングルであり、胸に滲みるバラ-ドの

“Lighthouse”。その総てを、彼女が鮮やかに伸びやかに描いていく。


「ヴォーカリストに出来ることってなんだろうという意識は、どんどん増して来てます。

「<salyu×salyu>を始めたことも大きいです。あのプロジェクトでは、声というもの、

「それがハ-モニ-となる面白さを二年近く研究してたようなものだし、

「自分の声に対する知識、信頼感も、そのことで増したんですね。

「だから今回のレコ-ディングは、ひとつひとつの楽曲ごとに<どうアプロ-チしようか?>って、

「すごく楽しみながらやれました」



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そのアプロ-チっていうのは、よく他のヴォーカリストも説明してくれるようなことなのだろうか?

つまりそれぞれの歌の主人公、その役柄になりきる、といったことだ。

はたまたSalyuというヴォーカリストならではの別の感覚なのか?

ここからは、彼女の歌に対する沢山の備えが、彼女の口から解き明かされていく。

「曲によって<合う声>が違うんです。オ-プニングの“camera”なら、

人に対して可愛さを振りまくってすごくいいエネルギ-だなっていうことを前に出して歌ったし、

“青空”は、鼻につかず出来るだけ気持ちよく素直に聞き取れる<話し方>みたいなことを

(歌において)意識してます。桜井さんからのオ-ダ-は、<♪あなたが好き>というサビを

私の限界のトップのキ-で叫んで欲しいということで、もちろんそれにもお応えしつつ……。

ldquo;悲しみを越えていく色”は、小林さんと長い間温めていた作品でもあるんですけど、男っぽい歌。

男っぽいって、ストイックという意味ですけど……。でもこの歌、簡単そうですっごく難しい。

冒頭の<♪ど・ろ・だ・ら・けに>はずっとミの同じところが続くんですけど、

普通に歌うとコ-ドとの関係で埋まってっちゃうみたいに聴こえてしまう。

そう聴こえさせないで歌うのが難しいんです。

皆さんも、カラオケで歌って頂けると分かると思うんですが(笑)」


<どう歌うか>について話す彼女はとても楽しそう。

そしてこれからも、今ある<らしさ>を更新し続けることでSalyuの活動は続いていくのだろう。

3/16から始まるツア-も

「これまでのセットリストとは違うものになりそう」だと言っていた。

でもまずは『photogenic』という作品を、じっくり聴いてみることにしよう。



■New Album……『photogenic』 Now on sale!

■SONG LIST……

01.camera

02.LIFE(ライフ)

03.magic

04.青空

05.Lighthouse

06.悲しみを越えていく色

07.パラレルナイト

08.月の裏側

09.ブレイクスルー

10.旅人


■LIVE……

3/16(金) 札幌市教育文化会館 大ホール

 

3/20(火・祝) 広島アステールプラザ 大ホール

 

3/23(金) 新潟県民会館

 

3/24(土) 川口総合文化センター リリアメインホール

 

3/30(金) 大阪国際会議場メインホール

 

3/31(土) 倉敷市芸文館

 

4/7(土) 電力ホール

 

4/13(金) 福岡市民会館

 

4/15(日) 千葉県文化会館 大ホール

 

4/20(金) 愛知県芸術劇場

 

4/26(木) 神奈川県民ホール 大ホール

 

4/29(日) 東京国際フォーラム ホールA
※詳しくはHPにて。

■ PROFILE…Salyu(サリュ)

 

映画「リリイ・シュシュのすべて」の音楽プロジェクトの一環として01年に歌手Lily Chou-Chouとしてデビュー。

その後、様々な活動を経て04年6月に小林武史プロデュースのシングル“VALON-1”で、

Salyuとして再デビューを果たす。

その類まれなる表現力と歌唱力は多くの著名人や音楽ファンの心を掴んでいる。


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記事内容:TOWER 2012/2/20号より掲載

 

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2012年02月20日 12:00

ソース: 2012/2/20

TEXT:小貫信昭