NICO Touches the Walls “夏の大三角形”「Library vol.2」
[ interview ]
〈完全無欠の爽やかポップ〉なサマー・チューンでありつつ、曲の細部に至るまで新たなアイデアをふんだんに注ぎ込んだ自信作。NICO Touches the Wallsの2012年の初リリースは、〈カルピスウォーター〉のCMソングとしてすでにオンエア中で、しかもそのCMにはバンド自身も登場しているという話題曲“夏の大三角形”だ。2枚の傑作アルバムを作り上げて創作意欲の頂点を極めた2011年を経て、次のステージへと踏み出したバンドの強い意志が伝わるニュー・シングルと、同日に発表されるPV集「Library vol.2」をテーマに、バンドの現在位置を探ってみた。
エモーションのヴェクトルが違う
――“夏の大三角形”は、いろんな意味ででっかいプロジェクトになりましたよね。曲もやりつつ、TV画面にも出てしまうという。
光村龍哉（ヴォーカル／ギター）「本当にありがたい話というか。去年のアルバム（『HUMANIA』）で一つやり切った感じはあったし、次の作品はすごく時間をかけて作ろうと思ってたんですけど、いいチャンスをいただいたので。もうちょっと時間をかけてアップグレードしようと思っていたものをこの曲に凝縮しようと、アルバムの制作が終わった直後ぐらいに作りはじめたんです」
――ここまでポップなサマー・チューンに振り切った曲って、ありそうでなかったなと思ったんですけどね。歌詞も、サビの〈いま全力で恋してる〉とか、ものすごくストレートだし。
光村「ちょっとミッシェル・ポルナレフの世界ですね（笑）。でも今回はどっちかというと、いきなりツウな話になりますけど、Bメロの僕のコーラスが、個人的には聴きどころだと思ってます。一押しポイント」
――えーと、ファルセットっぽい〈Ah-Ah-Ah-〉ってところですか。
光村「僕のなかでは〈スタートレックのコーラス〉って呼んでるんですけど。〈スタートレック〉のTVシリーズに出てくる、神々しい女神が光臨してくる時に流れるような、いなたい感じのコーラスっていうんですかね。このコーラスが見えた瞬間に曲の出口が決まったぐらいの満足感がありましたね」
――ちょっと古い感じの……。
光村「ノイジーなSF感というか、そういうものが出来たので良かったなと」
古村大介（ギター）「オレもBメロのそこにグッときました。〈すげぇ綺麗だな〉と思って、その綺麗さはいままであるようでなかった感じがして、すごく新鮮でしたね」
光村「（インタヴューの）冒頭からBメロを讃えるというのは、新しい展開ですね（笑）」
――AでもサビでもなくてB（笑）。しかもコーラス（笑）。
光村「曲としては、こういう懐かしロマンティックな感じというのは得意ではあったし、〈こういう曲がやっとシングルになったな〉というのがすごく嬉しいですね。王道でも、エモーションのヴェクトルがちょっと変わったというか、そこは明確に『HUMANIA』以降の2012年の自分たちの流れとして、変化していきたいところではあったんで」
――鍵盤系の音もうまくハマッてます。
坂倉心悟（ベース）「前のアルバムでもブラスが入ったりして、自分たち以外の楽器を入れて構築していくことができるようになってきたので。それが自然になってきたことが、個人的には新しいところに行ったなという感じがします」
対馬祥太郎（ドラムス）「フロア（タム）二つと、メインのドラムと、エフェクトのかかったドラムと、全部で4つのドラムを録ってるんですけど、そういうところで立体感を出したんですよ。AメロとBメロはシンプルにして、サビで一気にいくという、いままでやってきたバンド・スタイルとは違うアレンジの方向性で。みっちゃん（光村）のなかにギター・ロックの新しい形というイメージがあって、そこですごく引っ張ってくれたんで、ドラムもイメージしやすかったし、すごく共感できたんですよね」
光村「少ない音数で多くを語るギター･アンサンブルというものが、ここ何年か、いち音楽リスナーとしてグッとくる部分だったりしてるので。去年4人でいつもCDを貸し借りしていて、ずっとイメージしてたのが、テデスキ・トラックス・バンドの、音がいっぱい入ってるんだけど最低限のことしかやってない、あのグルーヴ感だったんですよ」
――ああー。なるほど。
光村「そういうこともあって、自分たちの曲にどういう感情をいかに埋め込んでいくか?というところが、隙間がいっぱいできたことでものすごくクリアになっていったし、考えられることがいっぱい増えていったので。間奏のトッド・ラングレン風ツイン・リードみたいなところも、隙間があることによって入れられるものだし。そういう点でも、今年向かいたい方向へいいスタートが切れてる曲だと思います」
